誤解多し。薬用シャンプーを使い続けなくていい理由

どうぶつ

ぽこです。

10年以上獣医師をやっています。動物病院でよく聞かれることなどを、なるべく分かりやすく、専門用語を使わずに解説していきたいと思います。

病院で処方された薬用シャンプーを、皮膚の状態が良くなっても使い続けていませんか?

私の病院にも、ずっと薬用シャンプーだけを取りに来ていた患者さんがいました。

病院に薬用シャンプーを買いに来る方で、「一度膿皮症になったから」という理由で何年も診察なしでシャンプーだけ取りに来る方がいらっしゃいました。たまたま予防接種で来たわんちゃんを見ても皮膚はとてもキレイで、以降膿皮症の兆候もなく、痒くなったこともないそうです。薬用シャンプーを使っているから調子がいいのであればいいのですが、

実はそれ意味ないかもしれません!

薬用シャンプーを使い続けなくていい理由は

  • 皮膚の表面に増えていた菌が落ち着いていれば薬用である必要はない
  • 薬用シャンプーは刺激が強い場合がある
  • 薬用シャンプーは洗浄力が弱い

薬用シャンプーって普通のシャンプーと何が違うの?

薬用シャンプーは基本的にお薬と同じで獣医師が皮膚の状態にあわせて選び、処方をします。ひと口に薬用シャンプーと言っても、抗菌成分、抗カビ成分が入っているもの、角質を溶かす成分が入っているもの、保湿成分が入っているものなどさまざまです。

なので、飼い主さんが自分で選ぶものではなく、病院で必要であれば獣医師に処方してもらう”薬”用シャンプーなのです。皮膚にトラブルがないわんちゃんの場合は無理に使う必要はありません。

薬用シャンプーを使った方がいいとき

薬用シャンプーが処方される場合は皮膚に何かしらのトラブルがある場合です。例えば膿皮症やマラセチア性皮膚炎などが多いです。動物病院で診断してもらった際には程度によって内服薬、外用薬、シャンプーなどが処方されることが多いかと思います。

これって皮膚の表面の常在菌(いつも、正常であってもいる菌)がなんらかの原因でバリアが壊れ、バランスが崩れて常在菌であるブドウ球菌やマラセチア(酵母様真菌)が増えてしまい、炎症がひどくなった場合です。痒みもありますし、皮膚に白ニキビのような膿の塊や黄色いカサブタができてしまい、早く治してあげたいですよね。

増えてしまった菌をシャンプーで物理的に洗い流すだけでなく、その菌を減らすためのお薬を入れたシャンプーが薬用(抗菌)シャンプーです。

薬用(抗菌)シャンプーを使うのは、基本的に皮膚の表面に菌が増えているとき

薬用シャンプーを使わなくてもいいとき

皮膚の状態がいい

皮膚の状態がいいわんちゃんはあえて薬用シャンプーを使う必要はありません。通常の低刺激のシャンプーで泡をたっぷり使って洗ってあげてください。

先述の通り、抗菌シャンプーは皮膚の表面に増えてしまった菌を減らすためのお薬が入っています。トラブルのない皮膚の上には常在菌はいますが、異常に増えている状態ではありませんよね。そんな皮膚にお薬を使う必要はあまりないと考えられます。薬用シャンプーのデメリットとして

  • 泡立ちづらい
  • 洗浄力が弱い
  • 皮膚への刺激が強いことがある
  • 一般のシャンプーに比べて高価

使ってみたことがある方なら想像がつくかもしれませんが、わんちゃんのシャンプーでの最重要ポイントである「泡」が立ちづらいのです。そして、泡が立ちづらいということは、皮脂や汚れを落とす洗浄力が弱いことがあります。泡立たないことでシャンプー剤をたくさん使ってしまう原因にもなりますね。

またシャンプーによっては角質を溶かす成分が入っていて皮膚への刺激が強い場合もあります。皮膚の炎症があってフケが出ていたり、角質が厚くなっているわんちゃんには必要ですが、そんなシャンプーを正常な皮膚のわんちゃんに使うことは、かえって皮膚の状態を悪くしてしまうこともあります。

皮膚の状態が良ければ通常の低刺激シャンプーで十分

皮膚の状態が良くても薬用シャンプーを継続するのはこんなケース

それはアレルギー性皮膚炎や脂漏症などの基礎疾患があり、膿皮症やマラセチア性皮膚炎を繰り返しているわんちゃんです。この子たちの皮膚はバリアが弱く、炎症が起こりやすいと考えられます。なので、定期的に薬用シャンプーをすることで、表面に増えつつあった菌を一旦リセットし、皮膚の状態を整える効果が期待できます。

その子によって毎回薬用シャンプーがいいのか、3回に1回でいいのかなど頻度は皮膚の状態と時期的なもの(例えば梅雨時に悪化しやすいのであれば、その時期は重点的に…)によって調整していきましょう。効果的なシャンプー療法は飲み薬を減らしたり、QOL(生活の質)の向上にとても大きな役割を果たします。

アレルギーや脂漏症がある子は定期的に薬用シャンプーを使おう

まとめ

病院で処方される薬用シャンプー。皮膚の状態がずっと安定していればあえて使い続ける必要はないことがあります。かかりつけの先生と相談してみてください。薬用シャンプーの使い方についてはまた今度記事を書こうと思っています。

  • 皮膚の状態が良ければ通常シャンプーでも十分なことがある
  • 薬用シャンプーは菌が増えている時に使って効果がある
  • 薬用シャンプーは洗浄力が弱かったり、刺激が強かったりする
  • アレルギーや脂漏症があるわんちゃんは皮膚が良くても定期的に使うのがおすすめ

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