獣医師を10年以上やっています。動物病院勤務の時に、療法食を出す機会がとてもたくさんありました。でもそれと同時に、療法食について飼い主さんからいろいろ聞かれることもたくさん。もちろん、かわいいうちの子のお口に入るものだから気になりますよね。
ただ、それなのに、療法食ってパッケージとか名前とか似たりよったりで分かりづらくないですか??
先生に出されたけど、結局このごはんってどんなフードなの?サンプル何種類も貰ったけど、どれを選んだらいいの??
なかなか診察室で詳しく聞くことができない方も多いはず。そんな方の参考になれば嬉しいです。
今回はロイヤルカナンのユリナリーS /O小型犬用について語ります。
これ初めて見たとき、「えっ、小型犬用?何が違うの?」って本気で言ってました笑笑。解説していきますね。
どんなごはん?
【ストルバイト】ストルバイトが形成されにくい弱酸性の尿となるように、ミネラルなどの栄養バランスを調整。
【RSS】尿中のストルバイトやシュウ酸カルシウムの飽和度が高くない健康的な尿量を維持するように、ミネラルなどの栄養バランスを調整。
【下部尿路の健康維持】ミネラルなどを調整することでストルバイト結石を管理し、尿石の80%を形成しにくくします。
【歯の健康のために】噛むことによって歯垢が沈着しにくく歯の健康を維持。またポリリン酸ナトリウムを配合。
原材料
米、コーンフラワー、肉類(鶏、七面鳥、ダック)、動物性油脂、加水分解タンパク(鶏、七面鳥)、超高消化性小麦タンパク(消化率90%以上)、植物性繊維、コーングルテン、大豆油、魚油、フラクトオリゴ糖、マリーゴールドエキス(ルテイン源)、小麦粉、アミノ酸類(DL-メチオニン、L-リジン、タウリン)、ポリリン酸ナトリウム、ミネラル類(Cl、Na、K、Ca、P、Zn、Mn、Fe、Cu、Se、I)、ビタミン類(コリン、E、A、B12、B1、ビオチン、B6、B2、葉酸、パントテン酸カルシウム、D3、ナイアシン)、保存料(ソルビン酸カリウム)、酸化防止剤(ミックストコフェロール、ローズマリーエキス)
カロリー
384 kcal/100g
どんな子に向いているの?
ストルバイト尿石症
尿のpHを弱酸性にするように栄養バランスを調整されています。目標尿pHは5.5〜6.5とのこと。石の原料になるマグネシウムを制限しています。また、ナトリウム量を調整して尿量を増やすことが期待できます。適正範囲内でやや多めのナトリウム量ですね。新鮮な水をいつでも飲めるようにしてあげましょう。すでに出来てしまったストルバイト結石や結晶を溶かす働きと予防する働きが期待できます。
シュウ酸カルシウム尿石症
シュウ酸カルシウムの予防のため、結晶のもとになるカルシウムを中程度に制限してあります。
シュウ酸カルシウム結石は一度できると療法食で溶かすことができない石です。なので石ができてしまうと場合によっては手術が必要になることも。再発もしやすい、厄介な石です。100%はなかなか難しいですが、基本は療法食による予防が大切です。
小型犬用の配慮
ここが他のシリーズと違うところですね。
粒の大きさ
けっこうロイヤルカナンなど海外メーカーのフードは粒が大きなことが多いです。やはり海外だと大型犬がたくさん飼育されているためだと思います。一方で日本では住宅事情もあり、小型犬が多いです。
小型犬だと粒が大きくて食べづらいといった声をよく聞きます。以前は飼い主さんがドライフードを砕いてあげてたなんて話も。お湯でふやかすという方法もありますが、(水分補給にもおすすめです)中にはドライフードのカリカリ、クリスピーが好きという子もいて、悩ましかったんです。
なので、小粒タイプが出たことで、今まで「食べること」が大変で療法食に苦労していた小型犬、飼い主さんにとって療法食を続けやすくなったと感じます。
歯のケア
わんちゃんの歯は42本あります。大型犬に比べて小型犬は歯の間隔が狭く、歯石がつきやすいです。歯石は単なる歯の汚れではなく、歯周病の原因になります。
歯周病が重度になると歯がぐらついたり、根に膿が溜まったりしてしまいます。さらに歯周病菌が心臓や腎臓に悪影響を及ぼす恐れもあります。
歯周病にならないためには歯垢、歯石がつかないように歯みがきなどのケアがとても大切。でもわんちゃんの歯みがきって大変ですよね。
このユリナリーS/O小型犬用にはポリリン酸ナトリウムという成分が配合されています。
唾液中のカルシウムを捕捉し、歯垢の石灰化をおさえることにより、歯石の沈着を大幅に軽減する(図1)。その後消化によってリンとカルシウムは解離し、消化管に放出されたのち吸収される。
同じ組成のフードを与えられた犬において、ポリリン酸ナトリウムを加えたほうが、歯石沈着率が大幅に低かったという実験データがある(Hennet 2007)(図2)。このためフードのキブル(粒)の外部コーティングに配合される。
出典:ロイヤルカナン栄養成分辞典
つまり唾液中のカルシウム分を先に捕まえることによって歯垢がガチガチの歯石になるのを抑える効果が期待できるということですね。ただ、これだけでは不十分なのでできたら歯磨きを毎日してあげましょう。より効果的に歯周病を予防することができます。
慣れないうちは美味しい匂いの歯みがきジェルを使うのもいいですね。食いしん坊さんにはローストチキンがおすすめです。
こんな子は注意
栄養がたくさん必要な妊娠・授乳期、成長期には使用はおすすめできません。
心疾患を持っている子も、尿量を確保するために必要なナトリウム量が心疾患のリスクとなることがあります。慢性腎不全、代謝性アシドーシス(尿を酸性化するものなので、血液が酸性に傾く代謝性アシドーシスを助長する恐れがあります。)には推奨されません。
まとめ
ユリナリーS/O小型犬用ってこんなごはん
- 下部尿路疾患で、小型犬用の療法食
- ストルバイト結石の溶解と予防
- シュウ酸カルシウム結石の予防
- ユリナリーS/Oよりも小粒で小型犬でも食べやすい
- 歯周病になりやすい小型犬に向けて、歯のケア成分配合
- 定期的な診察と尿検査を受けましょう
参考:ロイヤルカナン、獣医療法食評価センター
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