ぽこです。
獣医師を10年以上やっています。動物病院勤務を経て、今はペットの栄養やサプリメントなどを研究してます。
動物病院に勤務していた頃によく遭遇したのが「尿石症」。思ったよりも悩んでいる子が多くてびっくりしました。一般的なお薬や療法食でコントロールできるといいのですが、中にはなかなか一筋縄ではいかないケースも多々ありました。
そんな時に尿石ケアのサプリメントを使うことで解決したことも。
その尿石ケアのサプリメントに多く使われているのが「クランベリー」です。聞いたことがある方も多い、あの食材としても使われるクランベリーです。動物病院でサプリメントを出したら驚かれる飼い主さんもいました。
今回は、私たちにとっても馴染みのある「クランベリー」が尿石症にどんな働きをするのか、クランベリーを含むサプリメントはどんなものがあるのか、注意点などを解説していきたいと思います。
実はクランベリーには尿のPhを調節してくれる役割があるんです!
尿石症とは?
その名の通り尿に石ができる
尿石とは尿にできる石のことで、このドクターズ尿石ケアで対応しているのは、ストルバイト結石とシュウ酸カルシウム結石です。二つとも動物病院ではよく見られる結石で、犬や猫でメジャーな(2大巨頭ともいうべき)石の種類です。
犬や猫の尿のpHはだいたい弱酸性です。これがアルカリ性に傾くとストルバイト結石ができやすくなり、酸性に傾くとシュウ酸カルシウムができやすくなります。
尿のpHが変わったり、尿石ができる原因としては体質、食餌、感染、水分不足、肥満などさまざまな要因があります。
ちなみにストルバイトは食事療法で溶かすことができますが、シュウ酸カルシウムは一度結石ができてしまうと療法食では溶かすことができないと言われています。
シュウ酸カルシウムは予防第一ということです。予防としては尿Phが酸性に傾きすぎず、尿中のシュウ酸やカルシウム分をなるべく少なくして尿量を増やすことが有効と言われています。シュウ酸カルシウムの結石ができてしまうと手術して摘出するしか取り除く方法はありませんでした。
ひどいと命に関わることも
無症状で偶発的に見つかることもありますが、頻尿、血尿、排尿痛などの膀胱炎症状が起こって、病院へいったら尿石症と診断されることも多いです。重度になると石や砂が尿道(尿の通り道)に詰まってしまい、尿が出せなくなり命に関わることもあります。
診断は基本的には尿検査と、場合によってはレントゲン検査やエコー検査などをする場合もあります。
※こんな症状がある場合には自己判断で療法食やサプリを試さずに必ず動物病院へ行きましょう。ただの膀胱炎かと思っていたら膀胱の癌だったなんてこともあります。(実際にありました)
尿石症の治療は?
療法食にごはんを変える
1番はまずこれです。尿石症になりづらいように、ミネラルのバランスが調整されているフードです。適正範囲内で少し塩分も高めなので、飲水量も増やしてくれると言われています。ストルバイトと言われる結石であれば、フードを変えることにより溶かすことができます。
シュウ酸カルシウムの場合は食事療法で溶かすことができません。もし、結石になってしまうと手術で摘出するしかできないこともあります。
内用薬による治療
炎症の症状があったり、尿の中に細菌が増えてたりする場合はフード変更だけではなかなか落ち着かないことがあります。その場合は抗生物質、消炎剤、止血剤などお薬を飲むことが多いです。1週間から、長いと1ヶ月程度かかることもあります。
飲水量を増やす
尿石症や膀胱炎の対策として、水を飲む量を増やしてあげることが効果的です。尿が濃いと結晶も出来やすくなります。たくさん水分を摂って尿を薄めて洗い流すようなイメージです。
尿石症のケアができるサプリメント
治療の補助としてサプリメントが有効な場合があります。以下で解説していきます。
クランベリーってなんで尿にいいの?
クランベリーといえば、食材として見たこと、食べたこともあるのではないでしょうか?よくドライフルーツやお菓子でありますよね。
ではクランベリーがどういった働きがあるかを解説していきますね。
クランベリーの働き
クランベリーに含まれるキナ酸という成分が体内で馬尿酸という酸性物質へ変わります。
酸性の物質が尿中に排泄されると尿が酸性に傾きやすくなります。この働きによりアルカリ尿を正常なpHへ近づけると言われています。
さらにクランベリーに含まれるポリフェノールの抗酸化成分、プロアントシアニジンが尿路の健康をサポートします。
クランベリーが向いてる子
尿がアルカリ性に傾きがちで、療法食でのコントロールが不安定な場合に使用することが多かったです。
また、どうしても療法食を食べない、アレルギーやお腹の調子を崩してしまうというように、療法食でのケアが十分にできない場合の治療の補助として使用することもあります。
クランベリーのサプリってどんなの?
PEクランベリーU液(キックス)
原材料
還元水飴、水、クランベリーエキス、ソルビン酸カリウム
原材料は非常にシンプル。水飴が使用されているせいか、わんちゃんはスプーンに出しただけで、ペロペロ舐める子もいました。
液剤の他にチュアブルタイプもあります。
ウロアクトプラス(日本全薬工業)
原材料
ウラジロガシというのは古くから「流石茶」として民間療法で尿石症に使用されてきたものです。尿量を増やして石を流す効果が期待できます。
クランベリーとウラジロガシエキスにより尿の健康をサポート。さらにNアセチルグルコサミンを配合してあります。
グルコサミンといえば関節ケアが有名です。膀胱粘膜の表面にはグリコサミノグリカン層(GAG層)というものがあり、粘膜表面をなめらかに、膀胱粘膜の健康維持に重要な役割を担っています。Nアセチルグルコサミンとは、このGAG層を構成するアミノ酸で、膀胱粘膜の健康をサポートします。
UTクリーン(サンメディカ)
主な成分
Nアセチルグルコサミン、緑イガイ、クランベリーパウダー、Dマンノース
緑イガイというニュージーランド産の貝を使用しています。オメガ3不飽和脂肪酸や良質なアミノ酸が豊富で炎症を和らげる助けになります。
Dマンノースとは、食物繊維の一種です。吸収されないので、血糖値に影響を与える心配もなく、菌を吸着しやすい性質を持っています。
わんちゃんのストルバイト尿石症は細菌感染が関わっていることも多いので、治療のサポートとして使用することもあります。
クランベリーサプリの注意点は?
クランベリーが尿ケアにいいからと、人用のクランベリーのお菓子などを与えることは避けてください。症状がある場合は生やドライフルーツではなく、エキスを使用した犬猫用サプリメント製品をお勧めします。
サプリメントは医薬品ではありませんが、誤った使用をすると健康を害する恐れがあります。
尿石症のコントロールはやはりバランスが重要です。尿のpHがどちらに傾いても良くないんです。せっかく現在の治療でうまくバランスが取れている状態でサプリメントを追加してしまうとバランスが崩れてしまうこともあります。
尿が酸性に傾きすぎるとシュウ酸カルシウム結石のリスクが増えます。
必ず獣医師に相談して使いましょう。また、使用中も定期的な診察と尿検査を受けましょう。
まとめ
クランベリーが尿のケアに使われる理由
- 尿のpHを酸性に傾けてくれる
- アルカリ尿(ストルバイト結石)の治療の補助に
- ポリフェノールで抗酸化成分もプラス
- クランベリーのみのシンプルなサプリメントから、複数成分配合されたトータルケアサプリメントまでいろいろ
- 尿石症にサプリメントを使用する際は獣医師へ相談しましょう
- サプリメント使用中も定期的に診察と尿検査を受けましょう
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