【獣医師解説】ユリナリーS/O+CLTって他のユリナリーシリーズとなにが違う??

どうぶつ

ぽこです。

獣医師を10年以上やっています。動物病院で勤務していた頃、良く遭遇したのが膀胱炎、尿石症です。特に猫ちゃんで悩んでる子が多かったです。

尿石症は尿の中に結晶や石ができてしまう病気で、血尿や頻尿などの膀胱炎症状を起こしたり、酷いと尿の通り道をふさいでしまう尿道閉塞を起こすことも。

一方で猫ちゃんに多い「特発性膀胱炎」という病気があります。一般的な膀胱炎は尿結石や細菌感染によって引き起こされるますが、これは検査しても原因がはっきりしないものをいいます。

再発することも多いやっかいな病気で、治療はお薬を使ったり、環境を整えたりするほか、療法食による食事療法になります。

ここでよく聞くお悩みが!

先生、サンプルいっぱいもらったけど、結局どれにしたらいいの?

先生、療法食の違いはなに?

療法食の種類ってたくさんあるし、名前も複雑でよくわからない。特にこのユリナリーシリーズは名前も似ているし、何が違うのか、使い分けはどうするのか‥獣医師である私自身も初めはどうしたらいいか分からず大変でした。

今回は数ある尿石症用の療法食のなかでも、ロイヤルカナンのユリナリーS/O+CLTについて解説します。

このユリナリーS/O +CLTって猫ちゃんの特発性膀胱炎のケアとして役に立つごはんなんです。

今膀胱炎に悩んでいる、猫ちゃんのご家族、今は特に大丈夫だけど、尿の健康に気をつけたいと思っているご家族に分かりやすく、かつ実際の経験もあわせて解説します。

猫の特発性膀胱炎ってなに?

特発性膀胱炎とは、尿の結石症や細菌感染がなく、原因がはっきり分からない膀胱炎のことで、猫ちゃんに多い病気です。

頻尿・血尿などの膀胱炎症状が見られます。下部尿路疾患(結石症や尿道閉塞などの尿の病気)のなかで60%近くを占め、そのうち約半数が1年以内に再発するといわれています。

出典:ヒルズHP

発症要因としてはまだ不明なことも多いのですが、ストレスが一因になると言われています。

生活環境としては多頭飼育やトイレ、水飲みの不備、環境の変化、仲間関係が気に入らないなど、なにがストレスと感じるかはその子によります。また、猫ちゃん自身が肥満傾向、臆病な性格、飲水量が少ないなども要因となることも。

治療としては炎症がひどければ内服治療をすることもあります。基本的にはストレスが少ないように環境の改善、そして療法食を使うことです。

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ユリナリーS/ O +CLTって?

まずユリナリーシリーズを紹介

ロイヤルカナンのユリナリーS/Oと名前がつく療法食は尿石症ケアのフードです。猫ちゃんだけで全部で 種類。基本は同じ尿石症用のフードですが、それぞれに特徴があります。

出典:ロイヤルカナン

ウェットパウチもありますが、さらに分かりづらくなってしまうので、今回はドライフードのみ簡単に解説していきます。

ユリナリーS/OのSはストルバイト、Oはoxalateでシュウ酸のことです。二つとも尿にできる結石のことで、犬や猫でメジャーな(2大巨頭ともいうべき)石の種類です。ユリナリーというのはUrinaryで「尿の、泌尿器の」という意味になります。ユリナリーS /Oは尿のストルバイトとシュウ酸カルシウムをケアするごはんということです。

基本はこれで、シリーズになっているということですね。

ちなみにストルバイトは食事療法で溶かすことができますが、シュウ酸カルシウムは一度結石ができてしまうと療法食では溶かすことができないと言われています。シュウ酸カルシウムは予防第一ということです。

ユリナリーシリーズで後ろについている単語たちを解説していきます。

  • ライト:カロリーが少ない(これはイメージしやすい)
  • オルファクトリー:香りにこだわりが強い猫のために、食欲をそそる独自の香り組成に調整
  • エイジング7+:7歳以降のシニアへのケアがしてある
  • CLT:特発性膀胱炎のケア(詳細は後述)

これらの組み合わせですね。例えばオルファクトリーライトはオルファクトリー(香りがよく嗜好性が高い)で低カロリーの尿石症用療法食ということになります。

CLTってなんのこと?

【CLTとは?】特発性膀胱炎の食事療法食として加水分解ミルクタンパク(加水分解アルファS1トリプシンカゼイン)を配合し、L-トリプトファンの含有量を調整しています。(出典:ロイヤルカナンHP)

ストレスケアとしてミルクに含まれるタンパク質を小さく分解したものが含まれてます。(加水分解ミルクプロテイン)ラットの研究では抗うつ薬と同等の作用が認められたり、犬の問題行動の改善に効果があったとされています。(ペット栄養学会誌7(2):86-93,2004)

また、トリプトファンというのは猫ちゃんに必須のアミノ酸で、セロトニンの前駆物質(もとになる)になります。セロトニンというのは幸福感をもたらすホルモンとして知られています。攻撃性を減らしたり、不安を和らげる効果が期待できます。

ユリナリーS /O+CLTって結局こんなフード

猫ちゃんの特発性膀胱炎の要因と考えられているストレスのケア成分(CLT)が含まれ、かつストルバイト結晶やシュウ酸カルシウム結晶のケアも広く網羅したフードです。ちなみにユリナリーS /Oエイジング7++CLTというフードは7歳以上のシニア猫ちゃん向けの特発性膀胱炎ケアができるごはんということです。名前が長くてややこしいですね。パッケージも似ているのでご購入の際にはご注意を。

同様のフードにヒルズのc /dマルチケアコンフォートというフードがあります。こちらの方が少しナトリウムが低めなので尿量を増やす効果は多少落ちるかもしれませんが、長期投与には安心です。

また、カロリーが通常のユリナリーS /Oと比較して10%低くなっています。これは肥満が猫下部尿路疾患の原因となる可能性があるため、理想的な体重を維持するためにカロリー密度を低く調整しているためです。

療法食以外にやれることは?

  • ストレスを減らすこと
  • 生活環境の改善
  • 飲水量を増やす
  • 肥満ぎみなら減量する

ストレスが要因となることがあるので、生活環境を見直して、猫ちゃんが安心して暮らせるようにいろいろやってみましょう。何が原因かはその子によるので、様子を見ながら進めていくといいと思います。

下部尿路疾患の子に有効なのがやはり飲水量を増やすこと。特発性膀胱炎の場合も濃い尿が膀胱内に長い間あると刺激になってしまうので、なるべく水を飲んで薄めて出す!というのが有効です。

サプリメントという選択肢もある

どうしても引越しなどでストレスのコントロールが出来ない場合は猫の合成フェイシャルホルモン剤や加水分解ミルクプロテインのサプリメントを試してみるのも良いでしょう。ジルケーンという商品を病院では使用していました。

トリプトファンは過剰摂取で吐き気などが出る場合もあるそうで、サプリメントを使用する際にはフードの含有量を考慮して、獣医師に相談しましょう。

まとめ

  • 猫ちゃんの特発性膀胱炎は再発も多いやっかいな病気
  • 特発性膀胱炎はストレスが一因と言われている
  • ユリナリーシリーズは尿石症用療法食で、名前も複雑で分かりづらいが法則はあり
  • ユリナリーS /O+CLTは猫ちゃんの特発性膀胱炎をケアするごはん
  • ユリナリーS /O+CLTは猫ちゃんのストレスを和らげる加水分解ミルクプロテインとトリプトファンを配合
  • 肥満をケアするためカロリーを抑えている
  • ストルバイトやシュウ酸カルシウムのケアも同時にできる
  • 特発性膀胱炎のケアは療法食だけでなく、さまざまな角度から進めていきましょう
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