ぽこです。
わんちゃん猫ちゃんの病気で尿石症というものがあります。その名の通り尿に石ができてしまう病気です。中でも多いのがストルバイト尿石症です。体質や細菌感染が原因となり、尿の中に石や砂ができて頻尿や血尿などを引き起こします。
重度だと尿の通り道である尿道を塞いでしまい、命に関わることも。
このストルバイト結石は療法食で溶かすことができます。だいたい療法食で溶けるまで平均で数週間から1ヶ月程度かかりますが、重度で尿道を塞いでしまいそうな時などは出来るだけ急いで溶かしたいですよね。
今回はストルバイト結石に対して、積極的に溶かしていく、ストルバイト溶解食について解説していきます。
どんな時に必要なの?
普通の尿石症療法食と何が違うの?
処方されたけど、食べ続けて大丈夫?
自分でネットで買っていいの?
実はこれらの療法食は、一般的な療法食よりもさらに注意が必要なんです。その理由も知れば納得、療法食のお話です。
尿石症って?
尿石とは尿にできる石のことで、このドクターズ尿石ケアで対応しているのは、ストルバイト結石とシュウ酸カルシウム結石です。二つとも動物病院ではよく見られる結石で、犬や猫でメジャーな(2大巨頭ともいうべき)石の種類です。
犬や猫の尿のpHはだいたい弱酸性です。これがアルカリ性に傾くとストルバイト結石ができやすくなり、酸性に傾くとシュウ酸カルシウムができやすくなります。尿のpHが変わったり、尿石ができる原因としては体質、食餌、感染、水分不足、肥満などさまざまな要因があります。
ちなみにストルバイトは食事療法で溶かすことができますが、シュウ酸カルシウムは一度結石ができてしまうと療法食では溶かすことができないと言われています。
シュウ酸カルシウムは予防!
シュウ酸カルシウムは予防第一ということです。予防としては尿Phが酸性に傾きすぎず、尿中のシュウ酸やカルシウム分をなるべく少なくして尿量を増やすことが有効と言われています。シュウ酸カルシウムの結石ができてしまうと手術して摘出するしか取り除く方法はないと言われています。
ストルバイトは感染のコントロールと療法食による溶解
ストルバイトは療法食で溶かすことができますが、シュウ酸カルシウムに比べると結石が大型になりやすかったり、大量に砂のような形で溜まったりすることがあります。わんちゃんのストルバイト尿石症は細菌感染からくるものが多いです。膀胱で炎症を起こしていることが多く、血尿や頻尿などの症状が見られます。
排尿ができていればまだいいのですが、砂利状、砂状の結石が尿道(膀胱から尿の出口までの間)に詰まってしまう尿道閉塞を起こすことも時にあります。特に尿道が細いオスで詰まりやすいです。閉塞を起こしてしまうと命に関わることもあり、緊急時はカテーテル(細い管)で詰まりを解除したり、場合によっては手術になることもあります。
ストルバイト溶解食って??
シュウ酸カルシウム結石と違い、ストルバイト結石は療法食をはじめとする内科的治療である程度は溶かすことができます。ストルバイト用の療法食は各メーカーから複数出ていますが、その中でも特に積極的にストルバイトを溶かすための療法食があります。
ストルバイト溶解食が必要になる場合
では一体、どんな場合に積極的にストルバイトを溶かす溶解食が必要になってくるのでしょうか?
それは前述の「尿道閉塞」リスクがある場合が多いです。
その他の場合もありますが、あまり症状もなく、偶発的にストルバイトの結晶だけが少し見つかった場合などは積極的に溶かす溶解食を使うことはほぼないです。
やはり結石や砂が詰まりかけていたり、大量に認められたりすると、いつ完全に詰まってもおかしくはない状態です。尿道閉塞のリスクがあり、一刻も早く溶かしたい!という場合にストルバイト溶解食を使用することが多いです。
各メーカーからのストルバイト溶解食まとめ
ヒルズs /d(犬・猫)
規格
犬:370g(缶詰のみ)
猫:500g / 2kg(ドライのみ)
製品の特長
ヒルズの栄養学者と獣医師が開発したプリスクリプション・ダイエット s/dエスディーは愛猫の尿ケアをサポートする特別療法食です。ストルバイト結石の溶解の管理に、最短6日間(平均13日間)で役に立つことが科学的に証明されています。
- 目標尿pH (5.9-6.1)が産生するようにマグネシウム、リンのバランスを調整
- 抗酸化成分配合
ドクターズストルバイトケアスターター(猫)
規格
500g 1.5kg
猫用ストルバイトケアスターターの特長
ストルバイト尿石をできにくくするために、リンを制限してあります。(Dr.’s Diet 猫用メインテナンス(pHエイド)比:約23%低減)また、同様にマグネシウムを制限(Dr.’s Diet 猫用メインテナンス(pHエイド)比:約40%低減)
弱酸性尿となるように、栄養学的にミネラル・アミノ酸のバランスを調整。 予測尿pH:5.9~ 6.1 とやや低めに設定されていて、まず最初に積極的にストルバイトを溶かしていくための療法食です。スターターという名前はそこからきているんですね。
ロイヤルカナンユリナリーS /Oシリーズ(犬・猫)
規格
犬用:各種ドライフード 1kg 3kg 8kg ウェットパウチ、缶詰(ユリナリーS /Oのみ)
猫用:各種ドライフード 500g 2kg 4kg ウェットパウチ
(ウェットパウチはユリナリーS /O、ユリナリーS /Oエイジング7+)
ユリナリーS /Oの特長
ユリナリーS/Oは、下部尿路疾患(ストルバイト結石症およびシュウ酸カルシウム結石症)の犬に給与することを目的として、特別に調製された食事療法食です。この食事は、結石の材料となるマグネシウムなどのミネラル成分を調整しています。
尿を弱酸性にする栄養バランス、尿pH範囲5.5-6.5を目標にしたフードです。ややナトリウム分が高めなので(適正範囲内ではありますが)よく水を飲むようになり、尿量が増えます。
上記の溶解食はある程度症状や結石の状態が落ち着いたら切り替えをしていくのですが、このユリナリーS /Oに関してはもう少し長期的に使用していくイメージです。ストルバイト尿石に関しては、溶解時は5~12週、再発防止時は6ヶ月以内、シュウ酸塩尿石に関しては6ヶ月以内に必ずチェックをし、見直しをしていくことが必要になります。
参考:獣医療法食評価センター
ストルバイト溶解食を使用する際の注意点
長期使用はNG
目標尿phは通常の尿石症用療法食は6.1〜6.5くらいが多いのですが、上記のストルバイト溶解食は全体的に目標尿phが低めです。尿量を増やすための栄養の調整などもしてあるので、「必要な時に使用」して安定したら変更するという使い方をします。
給与開始2~4週間後に尿沈渣の顕微鏡検査を含む尿検査、細菌培養検査、X線検査を実施し、尿石のサイズの変化、結晶の形成、感染の有無を再評価してください。必要に応じて、再発防止用のフードや、他のフードへの変更を検討とあります。
(参考:獣医療法食評価センター)
獣医師の診断なしでの使用はNG
頻尿や血尿などの膀胱炎症状が見られたからといって、自己判断でストルバイト溶解食を使用するのは避けてください。必ず獣医師の診断と処方のもと使いましょう。自己判断で使うことが危ない理由は以下の通りです。
- 閉塞のリスクがないか評価が必要
- ストルバイトが原因かを確かめる必要(ストルバイト尿石症以外には適応になりません)
- シュウ酸カルシウムが原因だと悪化する可能性
- 細菌感染などがないかを確かめる必要
- そもそも尿石症ではなく、腫瘍などの可能性もあるため診断が必要
使用中は水をたくさん飲ませて排尿状態を確認
療法食や消炎剤、抗生物質などの治療と並行しながら、お水をたくさん飲ませてください。なるべく尿を薄く、たくさん出してもらうことが有効です。濃い尿が長い間膀胱の中にあると石も出来やすく、刺激にもなります。
新鮮な水飲みを複数用意したり、猫ちゃんの場合は流水などその子が好む方法を選んでみましょう。また、ドライフードをふやかしたり、ウェットフードを使うこともいい方法です。
排尿の状態も確認して、ほとんど出ていないことが1日続いたり、食欲低下、嘔吐などあればすぐに動物病院へ相談しましょう。
尿が酸性に傾きすぎるとシュウ酸カルシウムのリスク
他の尿石症用の療法食と比べて、ストルバイト溶解のためのこれらのフードは目標尿pHが全体的に低いです。ストルバイトは尿pHを下げれば溶けるのですが、低い尿pHだと今度はシュウ酸カルシウム結石が出来やすくなってしまいます。
一生懸命ストルバイトの治療をしていても、なかなか治らないと思っていたらシュウ酸カルシウム結石が出来てたなんていうことも聞きます。
シュウ酸カルシウム結石は一度できてしまうと療法食で溶かすことができません。予防するためにも定期的に尿検査をしながら療法食を見直し、調整していく必要があります。
まとめ
ストルバイトを積極的に溶かしていくための療法食の目的、種類、注意点は以下の通りです。
- 尿道閉塞のリスクがあるなど、積極的にストルバイトを溶かしたい場合に使用される
- ヒルズではs/d、ドクターズケアでは猫用ストルバイトケアスターターという商品が該当
- ロイヤルカナンのユリナリーS/Oシリーズは継続することもできるストルバイト溶解食だが、定期的な見直しが必要
- 長期使用は避けて、ある程度落ち着いたらc/dなど長期使用に向いている療法食への切り替えがいい
- 自己判断でストルバイト溶解食を使用することはリスクがある
- 水をたくさん飲ませて尿を薄めて排泄させてあげましょう
- 尿を酸性に傾けるのでシュウ酸カルシウム結石のリスクは注意が必要
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