【獣医師解説】知ってるようで知らない療法食の基本

どうぶつ

ぽこです。

獣医師を10年以上やっています。動物病院で勤務していた頃、そして現在一般企業でペットの栄養関連の仕事をしながら思うことがあります。

ネットにはいろいろなものが揃っているなぁ。

その中のひとつが療法食。

これ、以前は動物病院でしか買えなかったりしたんです。今も一部の療法食は病院または病院コードを入れた専用ECサイトでしか買えないのですが、大手のフードメーカーの療法食がポチッとすれば買える、そして家まで届けてくれる。

なんて便利な世の中になったんだ。

でもその反面、誰でもすぐに買えるからこそ、注意が必要な場合があるんです。自己判断で療法食を使って健康被害がでた報告も、そして実際に私もそんな患者さんを経験しました。

今回は、そもそも!療法食っていったい何なの?というところを解説していきます。

療法食とは獣医師の診断と指導のもとで使うフードのことなんです!!

そもそも療法食って?

療法食とは、栄養成分の量や比率が調整または特別な方法で製造され、食餌療法において獣医師の診断・指導に基づき給与することを意図したペットフードです。

要するに、栄養成分を病気の治療補助のためにあえてアンバランスにしてあるんです。療法食だから健康的なごはんという訳では決してありません。だから健常な子が食べ続けると、健康を害する恐れがあるんですね。

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自分で買えるの?

基本は動物病院や専用ECサイトで。

食餌療法の安全性と有効性を確実なものとするため、定期的な見直しが必要となります。療法食により数週間から数ヶ月と目安がありますが、そこはその子の状態によって診察でチェックする間隔や頻度は異なってきます。

疾病の進行や状態の変化に併せて獣医師が適切なフードを選ぶことになります。

ネットに出てる療法食もある

動物病院で使用または販売されてきましたが、医薬品ではないため療法食の流通が薬事法等で規制されることがないです。なので一部の療法食はネット通販やホームセンターなどで売られているものもあります。

しっかり獣医師による定期的なチェックを受けた上で、決められた療法食を買う分には問題ありません。フードが途中で無くなってしまうリスクも減りますし、自宅まで届けてくれるのはとても便利です。

自分の判断で買うのは危険?

しかし、規制がないため、近年獣医師の診断・指導を受けずに飼育者自らの判断で購入使用し、健康被害を起こす事例も報告されています。

自己判断で使用することはもちろん好ましくないです。

一度獣医師の診断で使い始めた療法食でも、獣医師のチェック、指導なしで長期間同じ療法食を続けて健康被害が出ることもあります。なぜなら長期使用に向かないものがあったり、健康状態によって調整が必要だったり、別の病気が出てきて条件が変わったりすることがあるからです。

参考:獣医療法食評価センター療法食ガイドラインより

どんな種類があるの?

メーカーも複数あり、同じ目的の療法食でも味の違いやカロリー、適用年齢などが違うシリーズになっているものもあります。メジャーなものは以下の通りです。

腎臓用療法食

今ペットも高齢化が進んでいます。特に高齢の猫ちゃんで多いのが腎臓のトラブル。腎臓に負担がかからないようにタンパク質やリンなどを調整しているフードです。

各社から味や形、粒の大きさなどバリエーションも比較的多く出ています。飽きやすい子は数種類のフードをローテーションして使ってみてもいいかと思います。

また、腎臓が悪くなり始めた初期に使えるフードも最近出てきてます。健康診断などで少し腎臓に不安がある場合には担当医に相談してみてください。

尿石症、膀胱炎用療法食

犬猫問わず、尿石症や膀胱炎は比較的若いうちからトラブルがあることもあります。尿石症は尿の中に結晶や石ができてしまうことです。体質、細菌感染、ストレス、飲水量、肥満など多くの要素が関わってきますが、療法食を使うことで尿の中の結石の材料のミネラルを減らしたり、尿量を増やすことで刺激を減らしたり結石を予防する効果が期待できます。

尿石症用の療法食は各社からかなり多くの種類が出ています。そして、プロである動物病院スタッフでも初めは戸惑うくらい名前もパッケージも分かりづらい。(個人的な感想です)

同じ尿石症用の療法食であっても、目的によって選ぶフードが違ってきます。誤った使用をしていると病態を悪化させることもあるので、定期的な診察と尿検査を受けましょう。

消化器系の療法食

お腹のトラブルがある子用の療法食も種類がいくつかあります。低脂肪のもの、高栄養のもの、繊維分が強化されたものなどがあります。例えば低脂肪と言っても病気の子用にかなり低くなっているので、単純にダイエット用フードと同じものではありません。

アレルギー用療法食

アレルギー用の療法食は大きく分けると2つです。ひとつ目は、アレルゲンになるタンパク質を小さく細かく分解してある加水分解食です。小さくすることでアレルギー反応を起こしづらいようにしてあります。

ふたつ目は新奇タンパク食といって今まで食べたことのないタンパク質を主体としたフードです。アレルギーを獲得していないので、アレルギー反応を起こさないことを期待して使います。タンパク質原としては、えんどう豆やカンガルー、魚などがあります。

ここで注意が必要なのは、アレルゲンが全く入っていないフードは存在しないということ。アレルギー用療法食を食べていても、おやつなど食べてたらそこでアレルギー反応が起きてしまう可能性があることです。

減量、糖尿病用療法食

減量用のカロリーが低くて、繊維質が多めの療法食もあります。繊維質が下痢気味の子に合う場合もあるので、お腹が緩めの子にも使われることがあります。

さらに炭水化物が少ないので、糖尿病の子に使うことも。ただ、エネルギー源としてタンパク質が高めなので、腎臓に問題のある場合は慎重に使っていく必要があります。

その他

その他、心臓が悪い子のために塩分が控えてあるフードや、肝臓、関節、てんかんなどそれぞれの状態に合ったフードが各社から出ています。

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まとめ

療法食とは疾病の治療のために栄養成分の比率や量を調整してあるペットフードです。

  • 療法食は獣医師の診断と指導のもと使用する
  • 療法食を使っている間も見直しをしながら使う
  • 定期的な診察が必要
  • 定期的な診察と指導のもとならネット購入も便利
  • 自己判断で使用すると健康被害を生じる恐れもある
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