獣医師を10年以上やっています。動物病院勤務の時に、療法食を出す機会がとてもたくさんありました。でもそれと同時に、療法食について飼い主さんからいろいろ聞かれることもたくさん。もちろん、かわいいうちの子のお口に入るものだから気になりますよね。
ただ、それなのに、療法食ってパッケージとか名前とか似たりよったりで分かりづらくないですか??
先生に出されたけど、結局このごはんってどんなフードなの?サンプル何種類も貰ったけど、どれを選んだらいいの??
なかなか診察室で詳しく聞くことができない方も多いはず。そんな方の参考になれば嬉しいです。
今回はロイヤルカナン、マルチファンクションシリーズわんちゃん用療法食ユリナリーS/O+低分子プロテインについて語ります。
ユリナリーS/O+低分子プロテインってどんなごはん?
原材料
米、加水分解大豆タンパク(消化率90%以上)、動物性油脂、チコリー、大豆油、植物性繊維、魚油、フラクトオリゴ糖、脂肪酸塩、ルリチシャ油、マリーゴールドエキス(ルテイン源)、アミノ酸類(タウリン、DL-メチオニン)、ゼオライト、ミネラル類(Cl、Na、K、Ca、P、Zn、Mn、Fe、Cu、I、Se)、ビタミン類(コリン、D3、E、ナイアシン、パントテン酸カルシウム、B6、B2 、B1、葉酸、A、ビオチン、B12)、保存料(ソルビン酸カリウム)、酸化防止剤(ミックストコフェロール、ローズマリーエキス)
特徴
犬用 ユリナリーS/O+低分子プロテインは、下部尿路疾患(ストルバイト結石症およびシュウ酸カルシウム結石症)で食物アレルギーによる皮膚症状・消化器症状の犬に給与することを目的として、特別に調製された食事療法食です。この食事は、弱酸性の尿となるようにミネラルなどの栄養バランスを調整し、マグネシウム含有量を制限しかつ食物アレルギーの原因となりにくい高消化性の加水分解大豆タンパクを使用しています。
出典:ロイヤルカナン
このフードは尿石症と食物アレルギー、食物不耐性または食べ物が原因となる消化器疾患の子に適したものですね。
食物アレルギーがあって尿石症もあると困ることがあります。なぜなら尿石症も食物アレルギーもそれぞれ食餌療法がメインだからです。尿石症用のフードにしたら痒くなってしまい、アレルギー用フードにしたら尿に石ができてしまう‥どっちかの療法食を選んで、どっちかの症状をあきらめなくてはいけないのか…
以前勤めていた病院の院長は「命に関わるから尿石症優先で。痒いのは我慢して」と普通に言ってました。確かにそうだけど、痒いのも辛いんだ!どっちもケアしたい!これが飼い主、そして獣医師の願いですよね。
そんな時に大きな助けになるのがこのユリナリーS/O+低分子プロテインです。以下で詳しく解説していきます。
保険スクエアbang!/ペット保険資料一括請求こんな子に向いているごはん
ストルバイト尿石症
尿のpHを弱酸性にするように栄養バランスを調整されています。目標尿pHは5.5〜6.5とのこと。そして結晶の原料となるマグネシウム量も制限されています。(0.04g/400kcal)また、ナトリウム量を調整して尿量を増やすことが期待できます。適正範囲内でやや多めのナトリウム量ですね。すでに出来てしまったストルバイト結石や結晶を溶かす働きと予防する働きが期待できます。
シュウ酸カルシウム尿石症
シュウ酸カルシウムの予防のため、結晶のもとになるカルシウムを中程度に制限してあります。また、高脂血症は最近、シュウ酸カルシウムの危険因子の可能性も報告されているので、その面でのケアも可能。
シュウ酸カルシウム結石は一度できると療法食で溶かすことができない石です。なので石ができてしまうと場合によっては手術が必要になることも。再発もしやすい、厄介な石です。100%はなかなか難しいですが、基本は療法食による予防が大切です。カルシウム、ビタミンDを中程度に制限(カルシウム: 0.5g/400kcal, ビタミンD: 86.2IU/400kcal)
食物アレルギーまたは食物不耐性
高消化性の加水分解大豆タンパク使用(高品質:アミノ酸スコア100、高消化性:消化率95%)大豆のタンパク質を小さく分解してあるものでアレルギー反応を起こしづらくなっています。(100%防ぐことはできないですが)含まれているアレルゲンは他に米があります。
市販のフードには複数種類のタンパク質が含まれていることがほとんどですが、このフードのアレルゲンは「米」「アレルギーを起こしづらく分解した大豆」だけです。ロイヤルカナンのフードで低分子プロテインというアレルギー用療法食がありますが、このユリナリーS /O+低分子プロテインは二つの療法食の特性を併せ持った療法食ということになります。
他のタンパク源が混入しないように製造前に製造ラインを清掃をしているそうです。他のアレルゲンが混じってしまうとアレルギー反応が起きてしまう可能性があるためです。
ただ、ひとつ弱点があって、「米アレルギー」の子に使えないということです。その場合はアレルギー療法食とサプリメントの併用など担当獣医師と相談してみてください。
食物不耐性とは、食物アレルギーと似ていますが、アレルギー反応ではありません。ある食べ物を食べると消化がうまくできず下痢などの体調不良を起こすことがあります。人で牛乳を飲むとお腹を壊してしまう乳糖不耐性が有名ですね。わんちゃんにも同じような子がいるので、この低分子プロテインは含まれるタンパク質も少なく、高消化性なので安心です。
消化器疾患
タンパク質を分解してあり、消化吸収が良くなっているので消化機能が弱っている子に有効な場合があります。尿石症を併発している場合にはこのユリナリーS /O+低分子プロテインを使うこともあります。ただ消化器疾患の種類やその子の状態によっても違うので獣医師の診断、指導のもと使用します。
ネットでは買えないフード
このユリナリーS/O+低分子プロテインは一般の飼い主さんがネットで買うことができません。動物病院での購入が主になります。
マルチファンクションシリーズはロイヤルカナンでもAmazonや楽天には出ていません。その理由は以下の通りです。
マルチファンクションというのは、ひとつのフードで複数の疾患のケアが出来る療法食のことです。動物たちも人間と同じように、病気や健康トラブルがひとつだけとは限りません。なのでひとつの療法食で、例えば肥満と尿石症というように複数のケアができると助かりますよね。
基本的に療法食というのは栄養成分を疾病のケアに併せてバランスを調整しているので、ちゃんとした知識と、獣医師の指導のもとで使用するペットフードです。マルチファンクション=多機能ということで、使用するためには注意が必要なので動物病院での購入が必要とのこと。
このユリナリーS/O +低分子プロテインは心疾患、腎不全、代謝性アシドーシスなどの場合、妊娠・授乳中、成長期などの場合は推奨されません。また定期的なチェックと見直しが必要とされています。
しっかりと獣医師の診断と指導のもと、定期的な診察をしながら使いましょう。
ユリナリーS /O+低分子プロテインを食べている子へのおやつ
ユリナリーS /O+低分子プロテインを食べている子へおすすめのおやつがあります。療法食を食べている子はおやつの制限をされることが多いかと思います。中でも厳しめなのが、アレルギーと尿石症です。なぜなら症状が悪化してしまう可能性があるので、どうしても「療法食以外のおやつあげないで」というふうになりがちです。
ただ、飼い主さんとしては「おやつ」ってやっぱりあげたいですよね。私もそう思います。そんな飼い主さんへお薦めしていたおやつが、「ペティッツソフトトリーツ ミネラルコントロール」です。
ちぎってあげやすいソフトクッキータイプで、アレルゲンフリー、ミネラルもコントロールされていて尿石症の子でもOKというおやつです。
まとめ
ユリナリーS /O+低分子プロテインはこんなごはん
- マルチファンクションシリーズで複数のトラブルに対してケアできるフード
- ストルバイトを溶解、そして予防
- シュウ酸カルシウムを予防
- ややナトリウムは高めで尿の量を増やす
- アレルゲンを制限し、食物アレルギーや食物不耐性に対応
- 米アレルギーは注意
- 一部の消化器疾患にも使用できる
- 獣医師の指導のもと使用、ネットで購入はできない
参考:獣医療法食評価センター、ロイヤルカナン公式ホームページ
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