【ペットの介護】これは辛い!床ずれのケアについて獣医師解説

どうぶつ

ぽこです。

獣医師を10年以上やっています。最近ではペットの犬や猫も高齢化が進んでいます。獣医療の進歩やフードの進歩でどんどん寿命が伸びています。動物病院で勤務していた頃、老犬、老猫のケアについて聞かれることが多かったです。

高齢化とともに増えているのが「寝たきり」。寝たきりになるとお世話もとても大変になりますが、中でも「床ずれ(褥瘡)」に悩む飼い主さんが多いです。

これ、本当に見ていて辛いですよね。傷の処置やお薬などを頑張ってやっていただくのですが、「痛そうで人間の方が精神的に辛い‥」というお声も多いです。

それなのになかなか治らない厄介なのが床ずれ。

今回は床ずれのケアについて、解説していきたいと思います。お家でもできる対処法があるので、試してみてください。

介護の壁に当たる人も多い

人の介護で大変な思いをしている方も多いかと思います。動物の介護はどうでしょうか。実際に動物病院には老犬・猫ちゃんがたくさん来院します。中でも『要介護』状態の子は増えてきたように思います。

状態はそれぞれですが、中には介護のためにお仕事を変えたという方もいます。お話を聞いていると、やはり時間的にも経済的にも壁があるようです。

寝たきりや認知障害などで目が離せない状態になることもあります。大切な家族のために頑張っていらっしゃる方も多いかと思いますが、その反面で介護疲れしてしまう方もたくさん見てきました。

動物病院や往診、デイケアサービスなども最近はありますので、頑張りすぎないでください。動物たちには、絶対にご家族の気持ちは伝わってるはずです。

寝たきりになる

人と同じで、高齢化、病気の関係で犬猫も寝たきりになることもあります。そうなるとお世話をするためには基本的に誰かがずっとそばにいなくてはいけないような状況になりがちです。以下のようなケアが寝たきりの子には必要になってきます。

寝返りをさせるのは必須!

身体が人より小さいので、小型犬や猫は寝返りをさせることはそこまで重労働ではないかもしれません。でも大型犬になると大人2人がかりだったりします。

小さな子で、大きな力が要らないとしても、身体がこわばっていたり、痛みがあったり、管が入ってたりすることもあります。寝返りとひと口に言っても、ただごろん、ばたんとすれば良いのではありません。結構大変ですよね。

  1. 身体の下に腕をいれる
  2. 頭をもう片方の手で支えながら身体を持ち上げる(身体が捻れないように、なるべく平らに)
  3. 反対側にゆっくり倒す(この時嫌がったりすると頭をガツンと打つことがあるので頭には手を添えておきましょう)
  4. シーツやタオルなど周りを整える

寝返りを頻繁にしても、寝たきりの子は向きぐせがあったり、なかなかうまくいかないこともあります。2〜3時間おきの寝返りを意識して行うようにしましょう。

排泄のケアは大切

排泄も自分でトイレに行くことができないので、基本的には寝ているところでそのまま排泄します。どんなにペットシーツを敷いても、おむつをしても身体が汚れてしまうことも多いです。汚れたままにしていると皮膚炎を起こす原因にもなります。こまめな清拭と定期的な洗浄が必要になってきます。

食事も介助が必要になることも

また、自分で身体を起こすことが難しいので、食事の介助も必要になります。自力で食べられる子は身体を支えてあげたり、口元にご飯を持っていってあげたり。自力で食べられない子は流動食やペーストのフードを口に入れてあげる『強制給餌』をすることもあります。むせないように、誤嚥しないように気をつけながらやるのは大変ですし、嫌がったりしたらもっと大変になりますよね。

寝たきりだと褥瘡(床ずれ)ができやすい

褥瘡(床ずれ)ってなんで起こるの?

寝たきりになると出てくる問題が褥瘡です。筋肉が落ちて、骨が出っぱる部分(腰や肩、頬骨など)に圧力がかかりやすく、血流が悪くなることで起こります。圧力だけでなく、寝たきりになってもずりずり動いたりしているときに、そこが刺激、摩擦になってむけてしまうことも。

床ずれを放っておくとどうなるの?

初めは皮膚が赤くなり、薄くなってきます。徐々にそこから皮膚が剥けて、内部の組織もどんどん壊死して大きくなってしまいます。ジュクジュクして痛みを伴うことが多く、進行すると骨まで影響が出ることも。

高齢の子では体力が落ちていたり、免疫力が低下したりすると細菌感染を引き起こしてしまい、命に関わることもあります。

床ずれケアにおすすめなのは?

床ずれのケアで最も大切なのは予防です。一度なってしまうと、なかなか治るのに時間がかかったり、徐々に悪化してしまったりすることも多いです。まずは床ずれを起こさないように予防することを意識しましょう。

もし、床ずれを起こしてしまった場合は以下のような対策と、早めの動物病院への受診がポイントです。悪化してからだと病院に行っても手の施しようがないこともあります。早めの対応が第一です。

体圧を分散

傷口にカバーして、その下にクッションなどをおきたくなりますが、実はこれNGなんです!下を柔らかいものにしても、出っぱる部分に圧が集中するのは変わらないんです。

じゃあ傷が床につかないようにドーナツクッションは??しかし、ドーナツクッションはかえって傷周囲の組織の血流を悪くしてしまい、悪化の原因になると言われています。

なるべく体圧が分散するようなマットを用意しましょう。難しい場合は、身体が凹んでいる部分にタオルやクッションを当てがい、褥瘡の部分が出っぱらず、身体が平らになるようにしてあげるといいです。

動物病院専用ですが、ユニチャームの介護マットは体圧分散の他、通気性が良かったり、丸洗いができて、動物病院では重宝していました。https://pet.unicharm.co.jp/pro/lineup1/index.html

その他にも通販などでペット介護用品は様々です。おうちの子の体の状態に合わせて、マットの形もいろいろあるので担当医と相談しながら選んでみてはいかがでしょうか?

こまめな寝返り

何よりこまめな寝返りで、血流をよくしてあげることです。下側になってると血流も悪く、圧力もかかりやすいです。上記の通り2〜3時間に1回は寝返りをしてあげましょう。

向きぐせのある子は苦手な向きの時にバスタオルなどを挟んであげたりしてサポートしてあげましょう。身体が曲がってしまったりしていると、片方だけ苦手なことがあります。

傷口の清潔を保つ

褥瘡が化膿しないようにケアすることも大切です。キレイに傷口を保つようにしましょう。お尻周りなどは排泄物で汚れやすいです。汚れたら洗うなど清潔に気をつけましょう。

傷口を濡らすことって怖いですよね。でも汚れたら洗ってあげるのが1番なんです。お風呂場でなくても、部分だけなら百均のドレッシングボトルにぬるま湯をいれてピューっとこすらず、水圧で流してあげるようにすると傷口にも優しいです。

傷口の状態によっては塗り薬などを動物病院で処方してもらいましょう。化膿どめの薬や傷の修復を助けるお薬などがあります。

まとめ

一度なってしまったらなかなか治らず、ケアも大変な床ずれ。何よりもならないように予防することが大切ですが、なってしまった場合も、おうちの子も、ご家族もなるべく辛い思いをしないで過ごせるようにちょっとした対処法を紹介しました。参考になれば嬉しいです。

  • 寝たきりになったら2〜3時間おきの寝返りをさせよう
  • 排泄や食事の介助も必要になることが多い
  • 床ずれは血流が悪くなることで起こる
  • 出っぱっている部分への圧がかからないようにすることがポイント
  • マットレスや体の凹んだ部分へタオルやクッションを入れることで対応
  • 傷口は清潔に注意
  • 床ずれができてしまったら早めに動物病院を受診

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