ぽこです。
獣医師を10年以上やってます。わんちゃんや猫ちゃんの病気で多い尿石症や膀胱炎。治療に療法食を使うことが多いです。その療法食も各社からいろいろな種類がでています。
今回は、中でも名前が似たりよったり、カタカナばかりで分かりづらい‥と私が個人的に思ったシリーズです。
そう!ロイヤルカナンのユリナリーS/Oシリーズ!しかも犬と猫で微妙にラインナップが違うのがまたややこしい。パッケージもパッと見似ているので最初は大変でした笑笑
サンプルを渡した飼い主さんも「先生、これ似てるけど何が違うん??」と。
なので、今回はわんちゃんのユリナリーS/Oシリーズについて解説したいと思います。基本が分かれば納得、療法食のお話です。
ユリナリーシリーズを紹介
ロイヤルカナンのユリナリーS/Oと名前がつく療法食は尿石症ケアのフードです。犬だけで全部で6種類のドライフード。中にはウェットのパウチや缶詰がある製品もあります。基本は同じ尿石症用のフードですが、それぞれに特徴があります。
以前はpHコントロールという名前ででていたフードですが、現在はユリナリーS/Oとなっています。
ユリナリーS/OのSはストルバイト、Oはoxalateでシュウ酸のことです。二つとも尿にできる結石のことで、犬や猫でメジャーな(2大巨頭ともいうべき)石の種類です。ユリナリーというのはUrinaryで「尿の、泌尿器の」という意味になります。ユリナリーS /Oは尿のストルバイトとシュウ酸カルシウムをケアするごはんということです。
基本はこれで、シリーズになっているということですね。
ちなみにストルバイトは食事療法で溶かすことができますが、シュウ酸カルシウムは一度結石ができてしまうと療法食では溶かすことができないと言われています。
シュウ酸カルシウムは予防第一ということです。予防としては尿Phが酸性に傾きすぎず、尿中のシュウ酸やカルシウム分をなるべく少なくして尿量を増やすことが有効と言われています。シュウ酸カルシウムの結石ができてしまうと手術して摘出するしか取り除く方法はありませんでした。再発もしやすく、悩みの多い病気です。獣医さん泣かせです。最近では一部サプリメントがシュウ酸結晶を溶かしたり、再発予防に効果的であるとも言われています。
ペットの仕事を始めるなら、プロの多くが持つ資格【愛玩動物飼養管理士 2級・1級 】犬のユリナリーシリーズにはどんなフードがあるの?
ユリナリーS /O
まずは1番オーソドックスなものです。犬用 ユリナリーS/Oは、下部尿路疾患(ストルバイト結石症およびシュウ酸カルシウム結石症)の犬に給与することを目的として、特別に調製された食事療法食です。この食事は、結石の材料となるマグネシウムなどのミネラル成分を調整しています。
尿を弱酸性にする栄養バランス、尿pH範囲5.5-6.5を目標にしたフードです。ややナトリウム分が高めなので(適正範囲内ではありますが)よく水を飲むようになり、尿量が増えます。
カロリー
388 kcal/100g
その他
缶詰、ウェットパウチもあります。尿石症には水分摂取が有効なのでウェットフードを取り入れることも考えてみましょう。
ユリナリーS /O小型犬用
犬用 ユリナリーS/O 小型犬用は、下部尿路疾患(ストルバイト結石症およびシュウ酸カルシウム結石症)の小型犬に給与することを目的として、特別に調製された食事療法食です。この食事もユリナリーS/Oと同じように結石の原料であるマグネシウムなどのミネラル成分を調整しています。
小型犬用って?
まず粒の大きさが小さくなり、小型犬でも食べやすい大きさになっています。やはり海外メーカーのドッグフードは粒が大きなものが多く、日本の小型犬では食べづらいといった患者さんの声も多かったです。中には毎回フードを砕いてあげてたなんて方も。
※ちなみにもし、小型犬用がなく粒が大きくて食べづらい療法食にお困りなら、お湯でふやかす方法を試してみてください。やわらかく食べやすくなり、水分補給にもなります。
そして、小型犬は歯の間隔が大型犬よりも狭く、歯周病になりやすいです。このユリナリーS/O小型犬用は歯の健康のためのケアもしてあります。噛むことによって歯垢が沈着しにくくポリリン酸ナトリウムを配合し、歯の健康を維持するとのことです。
カロリー
384 kcal/100g
ユリナリーS /Oライト
犬用 ユリナリーS/O ライトは、同じく下部尿路疾患の犬に給与することを目的として、特別に調製された食事療法食です。同様にマグネシウムなどのミネラル成分を調整しています。
ライトというのはライトカロリーということで、何となくイメージつきますね。体重過多(肥満)に配慮してカロリー密度を低く調整しています。
肥満は尿石症のリスク因子になります。肥満だと運動をあまりしないので飲水量も少なくなりがちです。トイレに動くのも億劫になるので、膀胱の中に濃い尿が長い時間溜まっていることになります。そうすると石もできやすくなってしまいます。このフードは体重過多に配慮して、ユリナリーS/Oと比較し、約15%カロリー密度を減らしてあります。
カロリー
330 kcal/100g
その他
ウェットパウチもあります。あまり水を飲まない子にはおすすめです。
ユリナリーS /Oエイジング7+
犬用 ユリナリーS/O エイジング7+は、下部尿路疾患の犬に給与することを目的として、特別に調製された食事療法食です。この食事は、マグネシウムなどのミネラル成分を調整しています。ここまでは今までのシリーズと同じです。
この「エイジング7+」というのは7歳以上のシニアのわんちゃん向けということです。エイジングはagingで加齢、歳をとったという意味です。
高齢期サポートとして、独自の栄養素と抗酸化成分を配合し、グルコサミン、コンドロイチンなどで関節のケアなども配慮されています。(以下の原材料の黄色の部分)
米、コーンフラワー、肉類(鶏、七面鳥)、動物性油脂、小麦粉、加水分解タンパク(鶏、七面鳥)、コーングルテン、超高消化性小麦タンパク(消化率90%以上)、卵パウダー、魚油、大豆油、トマト(リコピン源)、フラクトオリゴ糖、加水分解甲殻類(グルコサミン源)、マリーゴールドエキス(ルテイン源)、菜種レシチン、加水分解軟骨(コンドロイチン硫酸源)、セルロース、アミノ酸類(DL-メチオニン、L-チロシン、L-アルギニン、タウリン、L-トリプトファン、L-カルニチン)、ポリリン酸ナトリウム、β-カロテン、ミネラル類(K、Cl、Ca、Na、P、Mg、Zn、Mn、Fe、Cu、I、Se)、ビタミン類(A、コリン、D3、E、パントテン酸カルシウム、ナイアシン、B6、B1、B2、ビオチン、葉酸、B12、K3)、保存料(ソルビン酸カリウム)、酸化防止剤(ミックストコフェロール、ローズマリーエキス
また、ナトリウムとリンを低減し、腎臓の健康をサポートします。このユリナリーシリーズはややナトリウム分が高めで、その効果で尿量を増やし、尿石症への対応をすることが強みだったのですが、そうなると高齢の子で少し心配が出てきます。高齢になるとともに腎臓や心臓へのリスク因子になるナトリウムとリンが抑えられているので、今までユリナリーS /Oを食べていた子で、7歳以上であればぜひエイジング7+へ切り替えていただくのをおすすめします。
※ただし、腎臓や心臓に何か問題がある場合、問題が出てきた場合は状態を確認し、適切な別の療法食への切り替えが必要になることもあります。シニアであればなおさら定期的な診察が大切です。
カロリー
385 kcal/100g
その他
ウェットパウチもあります。
ユリナリーS /O+満腹感サポート
犬用 ユリナリーS/O+満腹感サポートは、下部尿路疾患で減量を必要とする犬に給与することを目的として、特別に調製された食事療法食です。この食事は、弱酸性の尿となるようにミネラルなどの栄養バランスを調整し、マグネシウム含有量を制限しかつ低カロリーに調整しています。
低エネルギー密度で266kcal/100gです。また、高食物繊維で41.6g/400kcalです。繊維分が多いので、商品名の通り満腹感が感じられ、「もっともっと」とおねだりをする食いしん坊さんには向いているフードだと思います。さらにバランスよく食物繊維を配合していることで、糖質の吸収を穏やかにします。
減量時に筋肉など(脂肪以外)を維持するため、タンパク質含有量を45.1g/400kcalと高めに設定されています。標準的なロイヤルカナンの成犬用フードと比較し、約66%も増量されています。
カロリー
266kcal/100g(シリーズ内で最も低い)
ユリナリーS /O+低分子プロテイン
犬用 ユリナリーS/O+低分子プロテインは、下部尿路疾患で食物アレルギーによる皮膚症状・消化器症状の犬に給与することを目的として、特別に調製された食事療法食です。この食事は尿石症のケア、かつ食物アレルギーの原因となりにくい高消化性の加水分解大豆タンパクを使用しています。
ビタミン類とアミノ酸類の独自の配合により健康を保つことで皮膚が本来持つバリア機能を維持します。また高消化性で食物アレルギーの原因となりにくい低分子ペプチド源として、加水分解大豆タンパクを使用。
市販のフードには複数種類のタンパク質が含まれていることがほとんどですが、このフードのアレルゲンは「米」「アレルギーを起こしづらく分解した大豆」だけです。ロイヤルカナンのフードで低分子プロテインというアレルギー用療法食がありますが、このユリナリーS /O+低分子プロテインは二つの療法食の特性を併せ持った療法食ということになります。
カロリー
371 kcal/100g
まとめ
- ユリナリーシリーズにはそれぞれ特徴がある
- その子の状態に応じて獣医師がチョイス
- 肥満気味ならユリナリーS/OライトやユリナリーS /O+満腹感サポート(満腹感の方がよりケアできる)
- 7歳以上ならユリナリーS/Oエイジング7 +
- ユリナリーS/O小型犬用は小粒で食べやすい、歯のケアにも配慮
- 水分摂取を増やすならウェットフードが効果的
- 食物アレルギーと尿石症を併発していたらユリナリーS /O+低分子プロテイン
- 低分子プロテインは米アレルギーに注意
- ウェットやドライをうまく使いながら飽きないように続けていきましょう
- 定期的な診察と尿検査は必ず受けましょう
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