ぽこです。
獣医師を10年以上やっています。いくつかの動物病院で勤務していると、病院ごとに方針や対応が大幅に違うことが身に染みて分かりました。
みなさん、動物病院で治療の際にちゃんと納得がいくまで獣医師から説明を受けていますか?
分からないことがあったら質問できてますか?
一般診療もそうですが、手術や入院など大きなことでもあまり説明をしない獣医師が中にはいます。残念なことに、入院日数や金額も伝えずに平然と動物を預かる人もいます。
人の方でも事前にしっかりと説明をしてから治療に臨む「インフォームドコンセント」は重視されています。
今回はこのインフォームドコンセントについて分かりやすく解説していきたいと思います。場合に応じて聞いておくといいポイントも併せて紹介します。
こんなこと先生にきいていいの?信頼されてないと誤解されないかしら?治療にいくらかかるのか聞き辛いけど不安‥そんなお悩みを解決できればと思います。
インフォームドコンセントって?
インフォームド・コンセント(informed consent)とは、「説明を受け納得したうえでの同意」という意味です。医師が病気や容態、つまり患者さんの体の中でどのようなことが起こっているかということや、検査、治療の内容、処方される薬について十分な説明をし、患者さんは内容をよく理解し、納得した上で同意して治療を受けるということです。薬剤師から薬を受けとる時も同様のことがいえます。
中外製薬HPより
要するに患者さんが納得して治療が出来るように、しっかりと説明をすることです。
ここができていないと、あとで「話が違う!」「手術すれば治るんじゃなかったの?」「いつまで入院するんだ!」などと、トラブルになったりします。
大切なのは、医師、患者ともに同じ認識を持って治療を進めることです。
どんな時に必要?
基本的に治療をするときは必ず必要です。治療内容によって質と量は変わってきます。
どんなことを説明される?
じゃあインフォームドコンセントって具体的にどんなことを説明してくれるのか。状況により少しずつ異なるとは思いますが、基本的には以下のようなことは最低限説明しなければいけません。
現在の患者さん(動物)の状態
身体検査や稟告(飼い主さんからのお話)、検査結果からどのような疾患が疑われるか。100%の確定診断ができなくても、今考えられうる疾患の中から仮診断を出して治療を進めていきます。
検査結果
検査結果も、ただポイッと渡すだけではなくてしっかりと説明をします。このような結果だったから、こんな状態が考えられて、だからこうする。そこまでは最低でも伝えなければと思いますし、自分も聞きたいと思います。
治療方針
上記を踏まえた上で、どうやって治療をしていくのか、ここが1番大事なポイントですね。
- 治療方法(内服薬、手術、注射など)
- どれくらいの期間が治療に必要か
- かかる費用の目安
それでも治らない場合の対応
獣医師がプロとはいえ、最初から100%診断をして治療が成功するとは限りません。特に物言わぬ動物が相手です。治療を進めていく中で、薬への反応などから除外していくと分かることも多いです。「後医は名医」なんて言葉もありますが、治療を進めた後はそれだけ得られる情報も多いです。
確定診断ができない場合は、まず仮診断で治療を進めていきますが、それで治らない場合の説明も必要です。他の原因としては何が考えられるのか、追加の検査は何が必要なのかといったことですね。
手術や入院の場合はより大切
外来の一般診療に比べると、手術や入院などの場合はより丁寧な説明が求められます。なぜなら生命に関わるケースも多く、治療費の金額も大きくなるためです。
- 疑われる疾患
- 手術なら術式、合併症、予後
- 入院期間
- 追加で必要な検査
- 大まかな治療費
こういった部分の説明があると飼い主さんとしても安心ですよね。特に治療費は大きな金額になります。「これを聞いていいのかな、先生嫌がるかな?」とか思わずに聞きましょう。
他院へ紹介の場合
また、かかりつけ動物病院では対応しきれないため、大きな専門病院や大学病院などに紹介することがあります。その際に聞いておく必要があることは以下のようなことです。
- 何のために大きな病院へ行くのか(手術、検査など)
- 大まかな治療の流れ
- 大まかな費用
- 受診時の持ち物(検査データ、紹介状など)
- 受診時の注意(絶食、絶水など)
いつもと違う病院、先生のところへ行くのは不安ですよね。しっかり必要事項を聞いてから行きましょう。心配なことがあれば、受診先の獣医師にも遠慮せずに質問してみてください。
聞きたいことは聞いていいんだ!
忘却曲線という話があります。人の記憶は割といい加減で、20分後には聞いた話の42%は忘れてしまうそうです。1日後には56%を忘れ、1週間も経つと74%は忘れてしまうのだそうです。
1日たてば話の半分は忘れる!
なのでしっかり丁寧に説明してくれてもほとんど忘れてしまうんですね。さらに自分の子が病気と診断された直後なんて、動揺して先生の話なんて入ってこない時もあります。
なので、ポイントは「あとから見返せるようにする」ことです。
- 検査結果の用紙でも何でもいいのでメモをとる
- 病院によってはインフォームドシートといって話した内容を書類にしてくれることも。
- 担当医にメモを書いてもらう
- 了承を取った上で録音(嫌がる方もいます。無断ではやめましょう)
疑問点があったり、聞いていないことがあればしっかり質問しましょう。その場でなくても、帰宅後に落ち着いたら電話することでも大丈夫です。うやむやにして治療を進めると、うまくいかなかった時に後悔する原因になってしまうかもしれません。納得するためにはセカンドオピニオンという方法もあります。これは担当医以外の別の医師に意見を求めることです。一般的には嫌がられたりはしないはずです。
もし、質問をしても答えてくれなかったり、面倒臭そうな対応をしたり、セカンドオピニオンを理由もなく嫌がったりするようであれば勇気を持って担当医(病院)を変えることも一つです。
まとめ
インフォームドコンセントって聞き慣れないかもしれませんが、要は、しっかりと医師から説明を受けて、納得して治療に臨むためのものです。物言わぬ動物だからこそ、大切な家族だからこそ元気になってほしいですよね。そのためにも獣医師にはしっかりと説明を聞き、質問があれば遠慮なくしましょう。
- インフォームドコンセントは治療には必要
- 手術や入院などの際には丁寧に聞くこと
- 費用面や治療期間なども説明してもらおう
- 人の記憶は忘れていってしまうので形に残して見返せるようにする
- 迷ったらセカンドオピニオンという方法もある
- 基本的に質問することを嫌がる獣医師はいない(納得して治療をすることは双方にとってプラスだから)
- わからないこと、不安なことがあったらなんでも聞こう
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