ぽこです。
獣医師を10年以上やっています。最近ではペットの犬や猫も高齢化が進んでいます。獣医療の進歩やフードの進歩でどんどん寿命が伸びています。動物病院で勤務していた頃、老犬、老猫のケアについて聞かれることが多かったです。
動物病院で、特にシニアの子のケアでよくあるお悩みが「薬を飲まない」です。動物病院では当たり前のように薬が出ますが、実際薬あげるのって意外と大変!
ご飯にまぜたらご飯自体食べなくなった、大好きなパンやお肉にくるんでも上手に薬だけ出す、飲んだフリして後で床に落ちてた‥心当たりのある方多いのではないでしょうか?
この記事では薬をどうやって飲ませたらいいか、飲まない原因と対処法を獣医師の視点から解説したいと思います!初心者には難しいなぁとお思いのあなた!獣医師や看護師も初めは初心者、そこから上達するのです。
通院が増える
もちろん高齢になれば何らかの疾患をもつ、またはいくつかのトラブルを併発することも多く、通院が増えることになります。通院が増えると時間も取られますし、もちろん医療費もかかります。
薬が増える
病気が増えればその分お薬も増えます。5〜8種類くらい飲んでいる子も多いです。以前はご飯と一緒に食べてた薬も、だんだん食欲が落ちてくると飲むのが大変になってくるというお悩みもよく聞きます。
どんな薬が多いの?
年齢を重ねるといろいろな持病が出てきますね。シニアの子に多いお薬は以下のようなものです。
- 心臓、循環器系のお薬
- 肝臓のお薬
- 発作(てんかん)のお薬
- サプリメント
中でも心臓のお薬は病状に応じて増えていく傾向があります。心臓の動きをよくする強心剤、血管を拡げる血管拡張薬、血圧のお薬、利尿剤など。多い子は常時5種類くらい飲んでることもあります。お薬が苦手な子にそれだけ飲ませるのは一苦労ですよね。
薬には実は優先順位がある!
たくさん薬をもらうと全部飲まさなきゃ!と思いますよね。薬を飲ませるのに苦労してたらいつのまにか薬が溶けてぐしゃぐしゃになってしまったりします。
担当医も全部必要だから出しているのですが、中には優先順位があります。例えば発作の薬などは薬を飲まないと血中濃度(薬が身体で有効な期間)が下がって、発作が起きやすくなってしまいます。また、心臓の薬なども優先度は高いです。
お薬が苦手な子は、ぜひ、担当医に薬の優先度を聞いてみてください。これは最低限絶対に飲ませて欲しい、これは出来たら飲んで欲しい‥といった感じでそれぞれの状態に応じて仕分けしてくれるはずです。私もよく聞かれました。それにより薬のあげ方も変わりますよね。
薬を飲まない原因って?
味、えぐみ、におい
薬の味、えぐみ、においなどが原因のことがほとんどです。犬や猫にとって薬品のにおいはきっとあまり良いものではないんでしょう。
また、動物用の薬というのは一部ありますが、人用の薬を使うことも多いです。ほぼ全ての動物病院で人用薬を使っているかと思います。人用の薬を使うとき、動物の体重に合わせて割って使うことが多いです。薬を割ってしまうと、コーティングがあれば気にならなかった苦味やえぐみが直接舌に触れることになります。私も抗生物質割って舐めてみたことがあるんですが、なんとも言えない苦さと舌にずっと残るえぐみ…これは無理だと実感しました。
これを嫌がる子が多いです。猫ちゃんなんかはヨダレだらだら、泡あわになってしまうこともあります。
また、丸々の錠剤でも、試行錯誤しているうちにコーティングが溶けてしまうこともよくあります。そうなると、同様に苦い中身が出てきてしまいます。
こうして嫌な思いをすると、しっかり覚えていて、また次の回で薬をあげようとすると嫌がるという悪循環に陥ってしまうのです。
無理に飲ませようとすること
一生懸命薬をあげようと無理に口を開いたり、手を入れたりして嫌な思いをすると、その後は警戒してしまいます。また、高齢の子は歯周病があることが多く、投薬の際に痛みがあったりするとなおさら嫌がりは強くなります。
そして何回も失敗しているともう動物たちの方が嫌になって「もう何しても嫌、触らないで!」という拒絶反応を見せてきます。そんな場合は少し時間を置いてクールダウンしましょう。もし嫌がる中で投薬をするのなら、1〜2回程度で終わらせて、その後に大げさなくらい褒めてあげてください。
薬のあげ方のコツ
フードに混ぜる時は少量で
食欲がある場合はフードと一緒にあげれば、人も動物もストレスがなく済ますことができます。そのままバクバク食べてくれる子は問題ないのですが、薬だけ残しちゃうタイプはコツが必要です。
1回のフード全てに薬をまぜてしまうと、そのフードを全量食べないと薬も全量与えることができません。もし、食べ残した場合、どれくらいの薬が足りないか分からなくなってしまいます。
フードと一緒に薬をあげるときは以下のようなポイントに気をつけてやってみましょう。
- 薬を混ぜるのはひと口分くらい
- 薬をあげるのは1番お腹が空いてるタイミングで
- 手やお皿からぱくっと食べてもらう
- 間髪いれずに残りのフードを差し出す
コツは薬入りのフードを食べた後、「なにこれ?ちょっとおかしいぞ!」と気づく前に残りのフードを見せて、追加で食べてもらうとバレにくいです笑
においのある補助トリーツを使う
美味しいおやつやピルポケットなどを使う方法があります。
持病やアレルギーにもよりますが、普段食べられない缶詰やちゅ〜るなどでもOK。動物病院専用の『投薬用ちゅ〜る』なるものもあります。粘度が普通のよりも高くてお薬を包みやすくなっています。
おやつタイプの投薬補助トリーツを使うのがやりやすいです。尿石症や心疾患、腎疾患があっても使えるようにミネラルが調整されているものもあります。しかもアレルゲンフリー。これに埋め込んで食べてもらうわけですね。
これらもお薬を包む必要最低限の量にしましょう。特に美味しいものであれば特別感をとっておきましょう。
口を開けて奥にいれる
1番シンプルなのがこれです。犬も猫も、しっかりと上を向かせて口の奥に薬を入れます。イメージとしては舌の根本(見えないくらいの場所)を目がけてやると成功しやすいです。薬を入れたら口を閉じて、しばらく上を向かせたままのどの辺りを優しくさすります。するとすんっと飲んでくれます。
その際に口をくちゃくちゃ、あぐあぐしてたら薬はもう口の手前に出てきていますので、仕切り直しましょう。
粉にする
粉にしてペーストに混ぜたり、水と一緒にスポイトやシリンジ(注射器)であげる方法です。異物感はなくなりますが、潰す手間があること、また、上記の通り、潰すと苦味などが目立つ場合もあるので要注意です。
ピルクラッシャーという、錠剤を潰すグッズを使うと手間が減ります!
水に溶かした場合は口の横(犬歯の奥)に隙間があるのでそこから入れます。この時に顔は上を向かせてあげて下さい。ペーストは口の裏側に塗りつけるようにするとよく食べてくれます。
ここでも使う水やペーストの量は少ないに越したことはありません。少量で速やかに投薬を終わらせましょう。
投薬器を使う
上級編ですが、どうしても口を持つのが怖かったり、警戒して食べなくなってしまう子には投薬器という方法があります。先のやわらかい、長めのスポイトのような形をしていて、薬を先端にセットして口の中にいれるためのものです。
病院でお願いする
どうしてもダメなら病院で投薬をお願いしましょう。看護師さんが信じられないくらい素早く飲ませてくれると思います笑。
高齢の子で移動が辛いという場合は、担当医と相談してお薬の優先度を決めて、減らしてもらうこともひとつです。もちろん全ての薬が必要だから処方されているのですが、毎日の人と動物のストレス、食欲不振などがあるなら最低限の薬だけにしてもらうこと
まとめ
わんちゃんや猫ちゃんに薬をあげるのって意外に難しいですよね。嫌がる様子を見るのも辛いし、何回も何回もやり直すのも辛い。ちょっとしたコツでうまくいくかもしれません。ぜひやってみてください。
- 薬を嫌がる理由はにおいや味、特に割ってある薬は要注意
- 無理に飲ませようと何回もやるのはNG、少し時間をおこう
- フードに混ぜる場合は少量のみに混ぜる
- おやつにも投薬補助用のものがあるので活用しよう
- 粉にすると苦味は注意、水やペーストは少量で
- どうしてもダメなら遠慮せず動物病院でやってもらおう!
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