ぽこです。
獣医師を10年以上やっています。最近ではペットの犬や猫も高齢化が進んでいます。獣医療の進歩やフードの進歩でどんどん寿命が伸びています。動物病院で勤務していた頃、老犬、老猫のケアについて聞かれることが多かったです。
必ず相談されるのが排泄のケアについて。
「歳をとったからか、トイレ以外での粗相が増えた」
「寝たきりで排泄すると身体まで汚れてしまって、その都度のお世話が大変」
「ぐるぐる歩き回って排泄物を踏んでしまう」
当たり前ですが、食べれば出る。このお世話がなかなか大変なんですよね。たとえ入院中の子でも、やはり排泄のケアはプロの獣医師、看護師であっても時間がかかります。
今回は、ちょっとしたコツで排泄のケアが楽になるポイントを5つ紹介しようと思います。今、おうちの子の介護やお世話で悩んでいる方の力になれればと嬉しいです。
介護の壁に当たる人も多い
人の介護で大変な思いをしている方も多いかと思います。動物の介護はどうでしょうか。実際に動物病院には老犬・猫ちゃんがたくさん来院します。中でも『要介護』状態の子は増えてきたように思います。
状態はそれぞれですが、中には介護のためにお仕事を変えたという方もいます。お話を聞いていると、やはり時間的にも経済的にも壁があるようです。
寝たきりや認知障害などで目が離せない状態になることもあります。大切な家族のために頑張っていらっしゃる方も多いかと思いますが、その反面で介護疲れしてしまう方もたくさん見てきました。
動物病院や往診、デイケアサービスなども最近はありますので、頑張りすぎないでください。動物たちには、絶対にご家族の気持ちは伝わってるはずです。
老犬、老猫の排泄で困ること
トイレ以外での粗相
トイレ以外での粗相が増える原因としては複数考えられます。加齢によるもののほか、膀胱や尿道疾患などの病気の可能性もあるので注意が必要です。
間に合わない
高齢になると、だんだん排泄を我慢することが難しくなってきます。これは一般的なことで、加齢によりよく見られることでもあります。
今まで外でしかしなかった子が我慢できずに外へ出たがったり、家の中で漏らしてしまうことも。また、家の中のトイレまで間に合わないという場合もあります。
※我慢できないくらい大量の薄い尿が出る場合は要注意です。
身体に必要な水分まで出てしまっている可能性があります。そんな子はお水もよく飲みます。今までと明らかに違う量の排尿だった場合は腎臓病やホルモン疾患、糖尿病などの可能性がありますので、速やかに受診をお勧めします。
排泄姿勢を取るのが辛い、トイレが合わない
さらに高齢になると足腰の筋肉が衰えて(後ろ足から衰えてきます)、関節痛などがあったりすることが多く、排泄の姿勢が取りづらい場合も。すると頑張ってトイレまで行けないことも出てきます。
- トイレに行くまでに段差などがある
- トイレの形が邪魔で排泄姿勢を取りづらい
- 排泄姿勢を取るのが痛くて我慢
- ペットシーツなどで滑ってしまい、踏ん張りが効かない
認知機能の低下
加齢と共に嗅覚や視覚も衰えてきます。また認知症のようになる場合も。トイレの場所がわからないため、排泄をしたくなった場所でしてしまう可能性があります。
寝たきりで汚れてしまう
動物たちも寝たきりで介護をすることも増えてきました。寝たきりの子の排泄ケアのお悩みとしてよくあることは以下の通りです。
- 寝たまま排泄するので下にペットシーツを敷いてても身体が汚れやすい
- 汚れた身体をキレイにするのが大変
- おむつをしていても漏れたり、身体が尿で湿ってしまう
確かに動物たちは毛が生えているので、ペットシーツやおむつをしていても、実際にはけっこう尿で濡れてしまうことが多いです。また、便がゆるかったりすると、毛にべったりついてしまってなかなかキレイにするのは一苦労。寝たきりの子を頻繁にお風呂に入れるのも大変ですよね。
自分の排泄物を踏んでしまう
足腰が弱っていたり、認知症などでぐるぐる回ってしまう子などに見られます。犬で多いです。排泄物を自分で踏み荒らして、気づいた時には大惨事‥そこかしこ、なんならわんちゃん自身もうんちだらけということも。
せっかくペットシーツを敷いていても動き回るので裏返ってたり、端の方で漏れたりすることもあります。
また、踏んでしまった足の裏も、肉球のあいだに汚れが詰まってしまい、湿っている状態が続くことで皮膚炎が起きやすくなります。
排泄ケアのコツ5選
トイレを失敗しても怒らないであげてください。「うわぁ大変だ」と思う気持ちもすごくよく分かります。でも動物たちは飼い主さんのちょっとした言動をよく見ています。
では排泄のケアに役立つコツを紹介していきたいと思います。
トイレの工夫
排泄しにくいのなら、排泄しやすいトイレに変えてみましょう。
- 段差を無くす
- スペースを広くする
- 近くにおく
- 複数用意する
- 滑らないマットなどを下に敷く
汚れやすいところをカバー
毛があって汚れが落ちづらいのであれば、お尻周りの毛を短く切ってしまうのも方法です。長毛種の場合、これだけでお手入れは格段に楽になります。
そしていつも汚れがちな尻尾。ここの飾り毛がかわいいんですが、ちょうど汚れがついてしまうんですね。毛を切ることもいいですし、病院では伸縮包帯で尻尾を巻いてしまう方法を使います。こ
の包帯はペタっとくっつくのですが、剥がそうと思えば、毛に貼り付いたりしないで取れる、動物病院ではよく使用するグッズのひとつです。これで巻いておけば汚れてもそこの包帯を替えるだけで済みます。
ペット用おむつを利用
歩き回ってしまう子や、踏んでしまう子にはやはりおむつがおすすめです。ペット用おむつはサイズもさまざまな種類が販売されています。
おむつをしていても、身体は汚れることはありますが、踏み荒らしたりすることは防ぐことができます。
おむつを使う上での注意点は、汚れたまま長時間おかずにこまめに交換してあげることです。排泄物が長時間皮膚に触れていると、皮膚の炎症の原因になってしまいます。また、尿道から感染が拡大し、膀胱炎などを起こすことも。高齢の子は特に免疫力も落ちていることが多いので注意をしましょう。
ペット用おむつの弱点、尻尾の穴から漏れる問題があります。サイズはありますが、その子によって胴回りや尻尾のサイズは違います。胴回りはテープタイプなので調整することはできますが、尻尾の穴は一律サイズなので、もし穴が大きければ隙間から漏れてしまうんです。
これの解決方は、以前診ていた17歳のダックスさんのお母さんに教えてもらいました。小型犬であれば、「おりものシート」を尻尾の穴の下側に横向きに貼り付けて使うそうです。劇的に漏れが減ったと喜んでいました。「ぽこ先生、これ悩んでる飼い主さんいたら教えてあげて!」と。何人もの飼い主さんへお伝えしました!
大型犬はなかなかサイズが難しい、かつ寝たきりになると介護が大変です。お手製のおむつカバーにペットシーツを入れ込んで工夫している方もいらっしゃいました。
部分洗い
どれだけ気をつけていても汚れる時は汚れます。そのままにしておけないし、ふくだけだと汚れは落ちないし、洗うのも負担がかかりそうだし…そんな時に活躍するグッズが部分洗い用の洗浄液です。付属のボトル(マヨネーズボトルみたいなの)で薄めて使います。
おすすめなのは断然。「ユニチャームのお尻洗い」です。これ本当によく落ちますし、においも取れやすいです。ペットシーツ数枚の上でお尻だけ洗うことができます。通販などでは買えないので動物病院でお問合せください。在庫がなくても発注してもらえるかもしれません。
もし、もっと本格的に汚れてしまった場合はやはりお風呂場か洗面台で洗わないといけません。でもできたら手早く、必要なところ以外は濡らしたくないですよね。子供をお風呂に入れるときのマットが手軽で使いやすいです。傾斜をつければ上半身を濡らさずに済みます。安価で手に入りますし、サイズや形もいろいろあるので便利です。
洗った後は優しく、でもしっかりとタオルドライをしてからドライヤーで乾かしてあげて下さい。この時も毛が短いとお手入れが楽です。
頼れるところは頼る
日々が大変であれば、動物病院の日中預かりなどで少しお世話をお休みしてもいいかと思います。
また、持病があって高齢だとトリミングも断られることが多いかと思いますが、動物病院併設のサロンに相談してみたり、ベテラントリマーさんがやっている出張トリミングサービスなどを利用してみてはいかがでしょうか?利用する際には体調面や注意事項などをしっかりチェックして、伝えた上で実施しましょう。
その他としては…
関節の痛みやふらつきがあるような子は、担当医と相談して関節のサプリメントなどを検討してみてもいいかもしれません。痛み止めの薬は腎臓などに影響を与える場合があります。サプリメントの中でも消炎、鎮痛成分が豊富なものをチョイスするといいかと思います。
また、バスタオルを使って腰を支えてあげたり、専用のハーネスなど、その子に合わせてケアをしてみてください。
まとめ
いかがでしたか?排泄のケアは毎日のことで、本当に大変だと思います。少しでも飼い主さんが楽になって、おうちの子とゆっくり過ごす時間を持てるようになれたら嬉しいです。
- トイレ以外での粗相は加齢の他に病気が隠れている可能性もある
- 寝たきりだと体が汚れてしまいやすい
- 汚れをそのままにしておくと皮膚炎の原因になる
- 排泄がうまくいかないのは関節炎や腰痛が原因の場合もある
- トイレの数や形状を変えたり、滑りづらくしてみる
- 汚れやすいお尻周りの毛をカットしたり、尻尾をカバーしたりするとお手入れが楽
- 状況によりおむつも活用
- 部分洗いには洗浄液やお風呂マットが便利
- 動物病院や往診、出張トリミングなどを上手に頼ろう
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