勤務先の動物病院の選び方。個人経営vs企業病院、どっち?

たわごと

ぽこです。

10年以上獣医師やってます。そのうち、小動物臨床では3軒の動物病院で勤務しました。

働く動物病院を選ぶとき、なかなか悩みますよね。私も転職サイトやホームページだけだと実際の様子も分かりづらく、入職してから「こんなハズじゃなかった」と思うことがたくさんたくさんありました。

今回は私が経験したのは一次診療の病院。

動物病院は大きく分けると個人経営の病院と企業が経営する病院があります。個人病院と企業病院とを経験したなかで、この視点から、それぞれの良かった点と、苦労した点を紹介したいと思います。

小動物臨床を目指す獣医学生さん、転職をお考えの獣医師さんの参考になれば嬉しいです。

注意:あくまで私の経験をもとにしています。いろいろな病院があるので、最終的にはご自身での判断を信じてください。

個人病院とは

その名の通り個人で開業した病院です。経営者は基本的に院長になります。規模は獣医師数が1人の小規模な病院から、5〜6人獣医師が所属する大きな病院まであります。

個人病院は、いわば「自分の城」です。自分のやりたいようにやるため開業をするので、それぞれの病院の方針はイコール院長の方針です。その結果、病院ごとのカラーも違いますし、病院の文化、独自のルールがあります。値段も自由診療なので全て院長の裁量で決まります。

個人病院のいいところ

①院長の得意分野を間近で勉強できる

院長の得意分野はやはり、病院の特色として売り出しているので、症例も集まります。なので新しい治療なども積極的に取り入れたりしてます。その診察から治療、経過、結果までを間近で見られるのは、大きな経験です。

病院によっては定期的に勉強会があって知識のアップデートをしていることもあります。

②人数が少ないと、診察や手術に携わる機会が多い

獣医師の数が少ないと、それだけ診察や手術に入る機会も増えます。多くの獣医師がいると、それだけ順番はまわってきません。

例えば手術は、一般的な病院では1日に1〜2件です。避妊、去勢手術のようなものから、整形外科までさまざまです。もし、獣医師が院長と2人なら、新卒で入って、毎日院長の助手に入るようになりますよね。一方、多くの獣医師がいる病院で、週に1回しか手術に携われないなんてこともあります。両者で経験に差ができるのは目に見えてますね。

③院長の判断で物事が進むので、柔軟に対応できることもある

新しい薬を使いたい、このフードをいれたいなど、診療をしていると新しいこと、ものを取り入れていくのはよくあることです。個人病院の場合は院長が「いいよー」と一言言えば、それで済むのです。まさに鶴のひと声です。

個人病院で苦労したところ

①院長の方針は絶対

先述の通り個人病院は「院長の城」です。院長がやりたいようにやるための病院なので、院長と治療方針が違うとかなり苦労します。中にはそれぞれの獣医師の方針を尊重してくれる仏のような院長先生もいると聞きますが、私が経験したのは、「うちの方針はこうだから!」という院長でした。

②福利厚生が整っていないことがある

個人病院あるあるです。最低限の社会保険とかは大丈夫なのですが、有給があってないようなものだったり、年末調整の還付金が1年返ってこなかったり、残業手当がつかない、昇給を忘れられた‥信じられないこともよく起こります。経理を院長がやってる場合は要注意です。

③院長が忙しいと、若手の育成が放置される

これも実際に見ました。見学に行った病院で、3年目の先生がほとんど診察に出られず、掃除、薬を作る、保定など看護師業務しかやってなかった病院がありました。話をしてみると、教わるということがほとんどないと。

自分から勉強もしなければいけない世界ですが、機会が与えられないというのは悲しいと思います。「俺の背中を見て学べ」的な院長がまだまだいることは事実です。

もちろん、ちゃんと育成、教育をしてスタッフを大切にする院長もいます。ただ、その院長にとっては「若手を教える」<<<「自分がやりたいように診療をする」だと、看護師業務くらいできればいいと考える方もいるということです。

④院長が苦手な分野は勉強にならない

院長があまり興味のない分野は、治療がアップデートされないことも。私の経験ですが、皮膚が苦手な院長は、とりあえずアポキルと抗生物質とアレルギー用のフード出しときますねという治療を皮膚が悪い子にはだいたいやってました。

そういうこともあるので見極めるためには自分での勉強はとても大切ですね。

企業病院とは

その名の通り、企業が経営している動物病院です。地域に複数の病院があることが多く、規模としては大きなものが多いです。

経営者は企業のトップ(社長)で、運営管理や経理など事務方のスタッフがいます。各病院に院長もいましたが、基本的には院長も従業員です。

経営方針は企業の方針なので、グループ内の病院はほぼ一定のルールのもと運営されます。各病院のカラーもありますが、基礎的な医療品質や値段などは企業から決められています。

企業病院のいいところ

①福利厚生がしっかりしている

まず第一にこれです。私はこれ目当てで企業病院に入りました。有給は法定通り、経理のスタッフがいるので、給与や休暇の計算もちゃんとして、残業代もしっかり出ました。女性が働きやすいような取り組みをしている企業もあります。

②教育体制が整っている

企業病院にはルールがあり、一定の医療品質を求められます。新卒獣医師には育成プログラムが用意され、先輩獣医師が必ず1人担当につきました。また、ビジネスマナー研修などもあり、社会人としてのスキルの向上もできました。

③多くの獣医師が在籍するため、勉強ができる環境

グループ内に多くの獣医師が在籍するので、それぞれの得意分野を学ぶことができます。希望すればグループ病院にその先生の診療を見に行ったりもできました。 

また、同じ疾患でも治療法はそれぞれ獣医師により違うことも珍しくないですよね。多くの獣医師がいる環境ではそれぞれのケースを見ることができ、さらに迷った時に複数の意見を聞くことができるのが強みだと思います。

私がいた企業病院は1.5次診療だったので多くの症例を経験できました。

④グループ病院間で異動、部署の異動がある

グループ内で異動があります。引き継ぎなどは大変ですが、環境が変わることで新たな学びもあります。

また、動物病院での悩みの一つ、人間関係です。閉鎖環境だと一度こじれると大変ですが、異動することで、退職をせずに環境を変えることができます。

さらに、ライフステージの変化に応じて、時短勤務可能なスタッフ数の病院へ異動したり、臨床ではなく、事務の部署に異動をすることで仕事を続けられるメリットもあります。個人病院に比べると選択肢の幅がかなり広がります。

企業病院で苦労したところ

①新しいことを始めるときに手続きがある

新しい薬を使いたい時など、稟議書を提出しないといけなかったです。企業なので仕方ないかもですが、やはり面倒な手続きがありました。

②ルールがあるので、柔軟な対応ができないことも。

ルールが決まっているので、飼い主さんの要望にフレキシブルに対応しづらい場面もありました。

例えば、ペットホテルの利用には混合ワクチンが必要なのですが、ホテル当日に接種することは不可でした。(体調管理の問題でホテル1週間前に済ますというルール)なので、ホテル利用で来院してもワクチン打ってなければお断りすることになります。

飼い主さんとしては、これから出かけるのにホテルに預ける予定だったのに、また別の預け先を探さないといけなくなり、想像しただけで大変そうですね。

③グループ病院間で異動がある

異動はメリットでもあり、デメリットでもあります。異動するとなると、患者さんの引き継ぎをしなければならない、自分もまた新しい環境に慣れなければいけない大変さがあります。せっかく時間をかけて信頼関係をつくり、仲良くなった飼い主さんや動物たちとお別れをするのはやはり寂しいです。

獣医師として思うこと

自分が職場に何を求めるか

どんな動物病院がいいかは一概には言えません。それぞれの状況、獣医師としてのスキル、希望などにより、「いい職場」はそれぞれ違うと思います。

働き始めて経験とスキルが向上したら、また次の目標が見えてくるときもあります。

私は、その時その時自分が求めるものはなにか?を大切に職場を選ぶことにしています。

まとめ

それぞれにいい点、大変な点があるので自分の求めるものにあわせて選びましょう!

  • 個人病院はひとまず院長の方針に合うか
  • 企業病院は福利厚生に強みあり
  • 教育体制は個人、企業それぞれに特長あり
  • 最終的には自分の判断を信じる

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