【誤解多し】ペット療法食をネットで買うとき、これ気をつけて!

どうぶつ

ぽこです。

獣医師を10年以上やっています。犬猫の動物病院で働いていた時に「あ、ちょっとこれ怖いなあ」と思ったことがありました。それが療法食のネット購入です。

私が新人の頃は、療法食はほとんど動物病院で買うことしかできないものでした。それが、ホームセンターにも売られるようになり、ネットで気軽に買えるようにもなり…忙しい人には本当に便利になったと思います。大きなフードを持って、動物を連れて移動するのは大変ですしね。

私が経験したのは、皮膚がボロボロのわんちゃんでした。皮膚がカサカサでフケだらけ。聞いてみたら、太り気味が気になったから、ネットで低脂肪食を買って、さらにお湯で油抜きをしてあげていたとのこと。低脂肪食は高脂血症や消化器疾患の子に使うごはんですが、健康な子には脂肪が不足してしまい、皮膚がカサついてしまったようです。フードを戻したらすぐにきれいになりました。

獣医師の指導のもと処方される療法食が、誰でも買えるようになったことの危ないなあと感じる点や、ここに気をつけてほしい点などをまとめて解説していきます。

そもそも療法食ってなに?

獣医師の指導のもとで使用するフード

特定の疾病または健康状態にある犬、猫の食事療法に利用することを目的とし、栄養成分の量や比率を調整又は特別な方法で製造され、獣医師の診断・指導に基づく給与を意図したフードです。

引用:ロイヤルカナンHP

要するに、病気や体調面で、成分を多くしたり、減らしたり、少し足したりして体調管理に役立てるためのフードです。獣医師の指導のもとに与えていくものを言います。

腎臓が悪い子用、減量用、消化器疾患のためのもの、尿に石ができちゃう子用‥さまざまな種類があります。同じ目的として作られたフードでも、各メーカーによって粒の形や大きさ、味などが違います。

「機能性ペットフード」とは違う

人間には健康維持や疾病予防に安心・安全に役立つ「機能性食品」がありますが、ペットの健康を維持していく上で目的に応じて栄養素などに配慮したものは「機能性ペットフード」と呼ばれています。

「機能性ペットフード」は病気の治療や予防を主な目的とせず、人間が栄養バランスに気をつけたりサプリメントを摂取したりするのと同じものです。

引用:アゼットジャパンHP

「尿に配慮した〜」とか「〇〇の健康に」などとパッケージに記載のあるものです。これらは健康に食生活を送っていくこと、健康を維持することを目的とするもので、サプリメントなどと似ていますね。一方、療法食は病気の治療や予防を目的としたフードなので、病気になってしまったらこの機能性ペットフードでは不十分な場合があります。

ネットで買えるのはいいことじゃないの?

療法食がネットで買えることのメリット

療法食がネットで買えるのはとても便利です。以前は動物病院でしか買えないものでしたが、最近ではホームセンターやネットで手に入りやすくなってきました。

  • いつでも買える(病院が休みでも、夜中でも)
  • 家まで届けてくれる
  • フードを切らせてしまう心配が少ない
  • 動物病院で買うより安いことがある(ポイントなどもつく)

また、動物病院のコードなどを入力すれば割引があるところもあります。飼い主さんは買いに行く時間と持って帰る手間を省くことができ、動物病院側は在庫管理をしなくても良い、さらに売上げもあるというとても便利なシステムです。

この場合は病院側がどの人が何のフードを買っているか、その周期までを見ることができます。なので、いきなり違う療法食を買ったり、転売目的のような明らかに多すぎる購入などを防ぐことができます。

ネットで誰でも買えるからこその危険

療法食の使い方を間違えてしまうと危険?

動物病院でコードをもらって、病院の管理下で購入をするのであれば安心です。また、獣医師の指示のもと、定期的にチェックして、「このごはん継続でね」と言われたものを購入する分には何も問題ありません。

ちょっと危ないなぁというのは以下のようなパターンです。

  • 飼い主さんの自己判断でフードを選ぶ
  • ずっと動物病院に行ってないでフードだけネットで飼っている
  • 同居の子にも同じ療法食を勝手にあげてる

病気が心配だから療法食を使ってもいい?

たまに病気ではないけど、病気が心配だから療法食を飼い主さんの判断であげている子がいます。

確かに例えば、前の子を腎臓病で亡くしたら、次の子はしっかり気をつけなきゃと思いますよね。でもだからと言って、腎臓用の療法食を健康な子にあげ続けることはおすすめしません。腎臓用療法食は老廃物のもとになるタンパク質を制限してあり、その分カロリー源として脂質や炭水化物が多めのごはんです。健康な子にとっては栄養バランスが偏ってしまうリスクがあります。

獣医師から腎臓にリスクがあるから腎臓用療法食を始めましょうと言われたら始めればいいんです。心配ならごはんを変えるよりも健康診断を定期的に受けるほうが効果的です。

病気が複数あるから療法食を混ぜて使っていい?

生き物ですから、持っている病気がひとつだけとは限りません。なので療法食も1種類ではカバーしきれない場合があります。そんな場合、療法食を混ぜて使うこともあるのですが、これも注意が必要です。

組み合わせによっては、混ぜることによって、その療法食の特長(いいところ)を打ち消し合ってしまうかもしれないんです。

例えば腎臓用の療法食と糖尿病用の療法食です。糖尿病が悪化して腎臓が悪くなる‥ってことは起こりますよね。そんな時、ごはんはどうしたらいいのでしょうか?それぞれの成分を見てみると、

出典:ロイヤルカナンHP
出典:ロイヤルカナンHP

注目はタンパク質と脂質ですね。上記の通り、腎臓用療法食はタンパク質を制限している代わりに脂質や炭水化物が多めです。一方で糖尿病用療法食は、もちろん炭水化物を抑えてあるごはんです。代わりのエネルギー源はタンパク質です。

腎臓用療法食はタンパク質12%以上、脂質16%以上となっています。糖尿病用療法食はタンパク質なんと35%以上、一方で脂質は10%以上と控えめです。

この2つの療法食の特長って正反対なんです。なので漠然と混ぜていると、腎臓にとっても、糖尿病にとっても悪さをしかねません。

この場合はしっかりと担当医と相談していく必要があります。病状や嗜好性などで判断をしてもらいましょう。「腎臓食をベースに血糖値はインスリンでコントロールしていきましょう」というように。

なかには混ぜて使っても大丈夫なフードもあるので、まず担当医に確認をする!というのが大切です

健康な子にも療法食をあげても大丈夫?

基本的に総合栄養食なので、同居の健康な子が間違えて食べてしまっても大きな問題はないです。ただ、その療法食をメインにして同じものを健康な同居の子も食べ続けるとなると注意が必要です。(たまにフードをそれぞれ分けられないから同じものを食べさせたいと言われることがあります。)

一緒に食べても大丈夫かどうかは、同居の子の健康状態や年齢、療法食の種類にもよります。例えば消化も良くて高栄養の療法食を肥満ぎみの同居の子が一緒に食べてしまったら、肥満に拍車がかかってしまいますよね。

どうしても食べるものをそれぞれ分けられないときは獣医師に相談しましょう。

動物病院に行かなくてもフードだけ買っていればいい?

では一度療法食を処方されたらずっとそれを食べ続ければ安心かというと、そうではありません。また別の体調面のトラブルが出てくるかもしれないですし、持病が悪化してフードが合わなくなる可能性もあります。

ネットで療法食を購入してもいいのですが、定期的に受診するようにしましょう。

まとめ

以前は動物病院でしか買えなかった療法食もネットで簡単に買えるようになり、とても便利になりました。その反面、誰でも買えるので、しっかり管理をしないと逆に体調をくずす原因にもなってしまいます。

  • 動物病院のコードを使って、病院の管理下でネット購入をするのが便利で安心
  • 療法食とは、基本的に獣医師の指導のもとで使用するフードのこと
  • 病気が心配だからと、自己判断で療法食を食べさせるのは栄養の偏りが起こる可能性
  • フードを混ぜるのは療法食の特長を消してしまうこともある
  • 一度処方されたからと言って、ずっと食べ続けるのではなく、定期的に体調のチェックを受けよう

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