ぽこです。
獣医師を10年以上やっています。動物病院で勤務していた頃、とても困ったことが『猫ちゃんの特発性膀胱炎』。
これ頑張って治療をしてもなかなか治らなかったり、再発を繰り返すこともある、やっかいな病気です。
さらに血尿や頻尿といった膀胱炎症状があると、何回もトイレに行ったり来たり。そんな姿も辛そうで、早くなんとかしてあげたいですよね。
でも特発性膀胱炎って結局どんな病気なの?
療法食あげてるけどそれでいいの?
今回はなかなか分かりづらい『猫ちゃんの特発性膀胱炎』についてどんな病気か、治療にはどんなことをするのか解説していきたいと思います。
治療が難しい病気ですが、かわいいうちの子のために、何か出来ることはないか?そんな方の役に立てたら嬉しいです。
猫の特発性膀胱炎とは?
猫の下部尿路疾患(尿石症や膀胱炎など)のなかでも60%近くを占めるのがこの特発性膀胱炎です。
特発性という名称がつくのは、原因がはっきりしない場合です。一般的な膀胱炎は検査をすると尿の中に結石、結晶があったり、細菌感染があって原因を調べることができます。ただ特発性膀胱炎の場合は検査をしても結石や細菌が見つからず、原因がはっきりしません。
特発性膀胱炎の原因は?
発症要因としてはまだ詳しく分かってはいませんが、ストレスが一因になると言われています。
じゃあ猫ちゃんのストレスってどんなこと?
- 引越しなどの大きな環境の変化
- ホテルへのお預かりや車などでの移動
- トイレの掃除が行き届いてない
- 多頭飼育でトイレや水飲みが足りない
- 大きな音がする
- 芳香剤や柔軟剤など匂いの強いものがある
また、肥満もリスクになります。運動不足もストレスになりますが、肥満になると動くのが億劫になり、水を飲んだりトイレに行くことも少なくなります。すると濃いおしっこが長い間膀胱の中にたまっていることになり刺激にもなりますし、尿結石もできやすくなってしまいます。
特発性膀胱炎が悪化すると命にかかわる?
そうは言っても、膀胱炎なんだから命にかかわることないんじゃない?
じつは油断出来ないケースもあるんです。それは尿道(おしっこの通り道から出口)が狭いオス猫ちゃんの場合です。炎症により膿や血液、炎症産物というねっとりした物質がでてきますが、これが尿道につまってしまうことが時にあります。そうなると尿道閉塞となり、尿を出すことが出来ずに膀胱がパンパンに膨れ上がり、場合によったら急性腎不全などを起こすことも。
トイレに行っていても尿がちゃんと出ているかを確認しましょう。ほんの数滴しかでてなかったり全く出てないことが1日続くようなら必ず受診をして動物病院で膀胱の状態を確認してもらうのをおすすめします。
特発性膀胱炎の治療はどうするの?
ではそんな特発性膀胱炎の治療ってどんなものがあるのでしょうか?
環境の改善
まずストレスが要因となる場合があるので、猫ちゃんが暮らす環境をできる範囲でもいいので整えてあげることです。
トイレの掃除の頻度を上げたり、トイレの砂を好みのものに変えてみたり、トイレ形や場所、数を調整してみてはいかがでしょうか?
室内に、猫ちゃんが落ち着ける場所がありますか?キャットタワーや隠れ場所などを作ってあげましょう。多頭飼育の場合も仲間関係が悪そうなら隔離するなどの方法をとりましょう。
大きな音の音楽や匂いの強いものなどを避けて落ち着けるようにしてみましょう。遊ぶ時間が短すぎる、またはかまいすぎるのもストレスになることがあります。
何が原因かはそれぞれで分かりませんが、少しずつ改善していくことで探っていきましょう。
療法食への変更
膀胱炎を起こしているので、膀胱内の環境を整えてあげられる療法食に変えることが多いです。ミネラルバランスが調整されていてストルバイト、シュウ酸カルシウム結石の予防になるものが多いです。さらに特発性膀胱炎の子用に各社から数種類のフードが出ています。
ストレスケアのために加水分解ミルクプロテインやトリプトファンが配合されていたり、消炎成分がはいっているようなものを選ぶといいでしょう。
場合によっては薬の内服
炎症が強い場合には消炎剤や止血剤などの薬の内服治療をする場合があります。特発性膀胱炎の場合は放っておいても治る場合もありますが、症状が出ている時の生活の質(QOL)がかなり下がってしまいがちなので、お薬の治療で手助けしてあげることも時には必要です。
飲水量を増やす
下部尿路疾患のケアとしてはなによりまず飲水量を増やすことです。これは尿石症であっても、特発性膀胱炎であっても有効な方法です。
たくさん水を飲むことにより尿が薄くなり、排尿とともに洗い流せるというイメージでしょうか‥
そうは言っても猫ちゃんに水を飲ませるのってどうやるの?大変じゃない?そう思いますよね。
- ウェットフードに変える
- ドライフードを水やお湯づけにしたり、ふやかす
- 水飲み皿を増やす
- いつでも新鮮な水を飲めるようにする
- 流水が好きな子は給水器などを使ってみる
サプリメントを使う
療法食もお薬もやっていて、まだ落ち着かないとか、薬をなるべく減らしたい場合などにサプリメントを使ってみることはひとつの選択肢です。
猫ちゃんのストレスケア
加水分解ミルクプロテインやGABAなどが入っているものが販売されています。環境を整えることが優先ではありますが、よほどストレスが重たそうな場合は獣医師に相談してみましょう。
炎症をおさえるもの
膀胱粘膜の炎症をおさえて、修復を助けてくれるNアセチルグルコサミンを含むもの、消炎効果のあるオメガ3脂肪酸を含むものなどを使ってみるのもいいかもしれません。
サプリメントはいわゆる栄養補助食品なので、効く子はよく効くけど、効かない子は変わらないなぁというのが今まで処方してきた感想です。でも飲んで悪影響のないものなら試してみてもいいのではないかと個人的には考えています。
まとめ
猫ちゃんの特発性膀胱炎に関して解説してきました。
- 特発性膀胱炎とは猫ちゃんに多い、原因がはっきりしない膀胱炎のこと
- 特発性膀胱炎は下部尿路疾患の60%近くを占める
- 再発が多く、コントロールが難しいことがある
- 原因は不明だが、ストレスが一因と言われている
- 対応としては療法食、薬、環境の整備などのストレスケアが中心になる
- サプリメントを試してみるのもひとつの方法
- 飲水量を増やすことは有効
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